| ||
名家のしきたりから逃れるため、自分の子供を守るために奮闘する女性『颯』と、彼女の子供『嵐』、そして父親の『流風』彼らがどうしようもない大きなものに流されながら、生き抜く様を描いた物語です。 登場人物の皆に「生きる」という意思が満ち満ちていて、すごく熱量のある作品でした。 颯と嵐、嵐と流風、流風と颯。それぞれがお互いに繋がりたいと願っているのに、大きな運命に流されながら離されてしまい、あるいは近くにいるのにどこかすれ違ってしまう。 風に吹かれるように大きなものに流される人生に抗いながら、時に受け入れながらも、心の片隅には大切な人への想いを捨てずに強く生きていく。 決してありふれてはいないけれど、彼らの生き様は確かに自分たちのどこかに通じ、なにか響き残すものがあるのではないかと思います。 そして、無粋な余談になりますが、これは同作者様の群像劇シリーズの、おそらく起点となる物語です。 どの作品からでも楽しめるかと思いますが、群像劇を読み解くひとつの醍醐味である『あの時のあの人』を様々な視点や角度から切り取る楽しさを堪能したいのならば、ぜひこの本は抑えておいて欲しいと思います。 特に、もし『cigar』を読んだのならぜひこの本は手にとって欲しい。あるいは両方一緒に手にとって欲しい。そんな一冊だと思います。 | ||
タイトル | 風まかせ | |
著者 | 木村凌和 | |
価格 | 500円 | |
ジャンル | 大衆小説 | |
詳細 | 書籍情報 |
| ||
現代、海の向こうのどこかで生まれ育ち、そして一人の女性に家族を奪われた男、メイズ。 そのメイズの復讐の道中に、子猫のように紛れ込んだのは一人の少女、桜花。彼女は和装のまま身の丈に合わぬ日本刀を振り回す規格外の少女です。 おっさんと少女は、同じ人物を追うという共通点から行動を共にします。そしてまた同じ人物をに追われる父娘、流風と環に出会い、奇妙な協力関係を築いていきます。 本作の魅力は外連味あふれる少女、桜花の大立ち回りだったり、その不器用な感情表現であり、それに振り回されるおっさんことメイズの歩み寄りの奮闘でしょう。 はじめは桜花を厄介としながらも、彼女の乏しい表情や仕草からその意思を読み取ろうとするメイズの努力や、徐々に慣れて読み取れるようになっていく様子がとてもほっこりしました。 殺伐とした物語の中にも、所々桜花や環の見せるあどけなさが肩の力を抜いてくれたりもして、そんな少女たちが過酷な運命に巻き込まれていく様がまた物語から目を離せなくしてしまう力を持っています。 食えない搦め手の使い手である流風と、子供らしく素直なようでどこか本心の見えない環。彼らの活躍も見所です。 流風はメイズを、環は桜花を翻弄しながら少しずつ変えていく。異なる物語を生きる二人と二人が相互に交差するその瞬間は、群像劇好きとしてはとてもたまりません。 流風と環、そして環の母親の物語は同作者様の『風まかせ』につづられています。 この本単品でもきっと楽しめますが、合わせてこの『風まかせ』を読めば、流風と環が抱える事情や想いをもっと深く知ることができるかもしれません。桜花が追い、メイズの仇である存在のことも。 そして是非、それぞれが確かな物語を持つこの群像劇の世界に深く浸っていただければ幸いです。 | ||
タイトル | cigar(前編) | |
著者 | 木村凌和 | |
価格 | 200円 | |
ジャンル | ファンタジー | |
詳細 | 書籍情報 |