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伸ばした指の先に、触れた赤ん坊の感覚を一生忘れないだろう。あやふやで、危なっかしくて、抱え守らなければ消えていなくなってしまいそうで。それでいて、愛おしい。とても、とてもとても。これ以上の言葉はきっと当てはまらない。 |
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名家のしきたりから逃れるため、自分の子供を守るために奮闘する女性『颯』と、彼女の子供『嵐』、そして父親の『流風』彼らがどうしようもない大きなものに流されながら、生き抜く様を描いた物語です。 登場人物の皆に「生きる」という意思が満ち満ちていて、すごく熱量のある作品でした。 颯と嵐、嵐と流風、流風と颯。それぞれがお互いに繋がりたいと願っているのに、大きな運命に流されながら離されてしまい、あるいは近くにいるのにどこかすれ違ってしまう。 風に吹かれるように大きなものに流される人生に抗いながら、時に受け入れながらも、心の片隅には大切な人への想いを捨てずに強く生きていく。 決してありふれてはいないけれど、彼らの生き様は確かに自分たちのどこかに通じ、なにか響き残すものがあるのではないかと思います。 そして、無粋な余談になりますが、これは同作者様の群像劇シリーズの、おそらく起点となる物語です。 どの作品からでも楽しめるかと思いますが、群像劇を読み解くひとつの醍醐味である『あの時のあの人』を様々な視点や角度から切り取る楽しさを堪能したいのならば、ぜひこの本は抑えておいて欲しいと思います。 特に、もし『cigar』を読んだのならぜひこの本は手にとって欲しい。あるいは両方一緒に手にとって欲しい。そんな一冊だと思います。 | ||
推薦者 | 夕凪悠弥 |