「あかるく」


葉ようとやつてきたね脈みゃくと生きてきたんだねと抱いてやる

黄金の銀杏並木はその侭に黄金の路となる農学部

赤い葉もあをい葉も冬が撫で去りて落ちてゆきたり何故あかるくなる

落葉のあとで枝枝見えしとき刺し違へてゐて胸も尖ぬ

葉を踏みて「かしゃり」が次の「かしゃり」までダンスのやうに歩く御所にて

落ちた葉は崩れをり続き何処までも落ち地の底で沈黙の侭

無口だね京大近くのカフェーにて季節柄の寂しいのだと決める

カフェラテの泡が消えたらさやうなら押し葉の栞で綴ぢたら終り

園庭の落ち葉拾ひてたんたんと絵具叩いて紙にしなせる

平たき眼をして一枚ひらう葉の葉脈これが樹の血脈か

         ■ 泉由良

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