育ちゆえ海に慣れないままだから砂から硝石ばかりを拾ふ
砂浜でサンダルに付いた微粒子を何処まで持ち帰れば旅だつた
光から家に帰れば平日の埃か砂か倦怠なのか
はてしないいつかの物語のなかの仄かに色づく砂丘の群れよ
大切な海の硝石をテーブルの隅に溜めれば砂粒残る
日常は箒を持たない人間が砂を掃きたい綺麗にしたい
それは夢それは現実だつたから口から砂を噎せながら吐く
家のなか視えない砂が掃き溜まり這ひ蹲る這ひ蹲つてゐる
砂に生まれ露に暮らした人生の終焉がまだ地平に見えず
水の音が遠く遠くにささやけく砂を捨てずに季節を過ごす
■ 泉由良