出店者名 にゃんしー
タイトル キャンディと王様(3)
著者 にゃんしー
価格 1000円
ジャンル 大衆小説
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紹介文
(2巻より続き)

野球部の部室で起きた事件の元になった少年は、甲子園に立っていた。
野球部を立て直したい。もう一度野球をしたいんだ。
高校3年生の夏を賭けた少女たちの闘いが始まる。そして、少年たちも。

もう二度と描けない、あの夏の日。
「王様」水樹が想い続けた「キャンディ」乙彼への願い。

ねえ、みんな、もう一度、
あんな風にかわいく、わらって……。
全3部作、完結。

「毎日毎日、野球の絵ばっかたくさん描いた」
 あさひは、ひとつ質問をした。
「高校のときに、全国高校生絵画大会で最優秀賞を取ってますよね」
 青春は、少しさびしそうに笑って言う。
「その絵、見たことある?野球の絵じゃなかったでしょ?」
「はい。インターネットで見たことあります。でも空が黄色い、すごいきれいな絵でしたけど、」
 青春は、大きなため息をつく。
「野球の絵って、誰にも見せたことがないんだ。あの高校二年生のときに、憑りつかれたみたいに描いた野球の絵を、越える絵を私はまだ描けてない。……あの頃の絵、全部捨てちゃったから分かんないんだけど。それが私が絵を描く、理由ってやつかな」
 青春は立ち上がった。そのまま窓にかけられたカーテンを大きく開くと、夏の強い太陽の光が入り込んでくる。
「先生!絵が……」
 マネージャーが慌てて声を上げると、青春は、
「いいって」
 と笑って答えた。
「たまには、夏の光を吸い込ませてあげないと」
 カフェギャラリーの一番奥にある絵が、その光を直接受ける。今回の個展のために描き下ろされた作品「あの夏の日」だ。公開こそしていないが、関係者からの口コミであっという間に広がり、既に本個展での最大の話題作となっている。
 灰色を基調とした大地に、赤い川が流れている。それを青春はじっと見つめると、やさしく語りかけるように言った。
「また描けなかったね」
 マネージャーがあさひに対して腕時計を指し示し、もう帰るべき時間であることを伝える。あさひは立ち上がると、最後にひとつ、質問をした。
「それ以降、もう野球はしていないんですか?」
 青春は「あの夏の日」に向かい合ったまま、振り返らずに答えた。
「高校三年生のときに、もう半年だけやったよ」
 マネージャーが、そっとカーテンを閉める。青春は丸眼鏡を外し、手のひらをじっと睨むと、言った。
「あんなに熱い夏は、もう無いかな」


(二巻の推薦文より続きです)

読み終えて、この作品は、「キャンディ」こと乙彼若菜が本当にかわいいと思える小説だったな!
と思いました。


長いけど、こんなに長い文章すべてかけて、登場する女の子がかわいいと言っている。



そして、余談というか、この作品には、作者と同じ「にゃんしー」という名前の
ストリートパフォーマーの青年が出てきます。
ストリートパフォーマーというところも作者と同じなので、おそらく作者自身が
この作中にゃんしーのモデルなんだろうな、と思うのですが、読みながら、
(いちおう私は作者にゃんしーさんと何度もお会いしたことがあるのですが)、
何故かまったく作者にゃんしーさんの絵でうかんでこない(笑)。


むしろ、作中にゃんしーを実写化するなら、作家にゃんしーさんが
ツイッターのアイコンにしている(そしてあまぶんマスコットでもある)
おとそくんが近いのではないか、と思いました。


野球をする女の子たちの小説で、ストリートパフォーマーで高校生ではない
にゃんしーがどう絡んでくるのか、そこもハートフルで素敵なので
ぜひ読んでいただきたいです。


「コギャル」好き。

推薦者壬生キヨム