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駅のなかにあるカフェは、凹凸のある厚手のギフト用ボックスで出来ている。 |
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最初から最後まで一気に走り抜けた。 何度も読んだ。 読み直すたびに読む時間はだんだん短くなって いつか読まなくても読んでいることになるのではないか。 読書の一番の妙が「夢中になれること」にあるならば、 読書とはつまり「本になること」なのではないか。 とにかく文章なのだ。 文章に一切淀みがない。 迷いなく書かれたそれは 読者を迷わせることなく奥底へ連れて行ってくれる。 ――たとえそれが入ってはいけない迷宮だったとしても 本作の文章を語るには、冒頭の一文を挙げるだけでよい。 「駅のなかにあるカフェは、凹凸のある厚手のギフト用ボックスで出来ている」 そんなはずはない、と思うところからこの作品は始まる。 そして文章は加速し、過熱し、固体から液体へ、液体から気体へ、 プラズマを越えた最終形態を「こころ」と呼ぶとしたら、それはふるえている。 感動を与えてくれるのはストーリーではなかった、キャラクターでもなかった。 具象を越える圧倒的な抽象だった。 これは事実。しかし個人的であるゆえ幾分か脆弱かもしれない。 ただそれを信じてくれるのだとしたら、この本を読んで欲しい。 この本はそんな人のためにある。 この本は、信じてくれることを望んでいる。 | ||
推薦者 | にゃんしー |