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あまぶんウェブショップ

販売は2021年7月31日をもって終了しました。
たくさんのご注文をありがとうございました。
  • DayDream Quest 〜最弱勇者が復活を繰り返したら魔王と対決することになりました〜

    伊織、くまっこ、コドウマサコ、島田詩子、藤木一帆、ほた、野間みつね
    500円
    エンタメ
    ★推薦文を読む

  • とある事情から勇者を目指している少女リョウ。旅の出だしで何度も何度も死んでしまっては幼馴染みの僧侶タツに復活させてもらう日々を送っていた彼女は、なかなか先へ進めないでいたが、タツが半強制的に墓地へ行けと指示した時から話が急展開の様相を見せ始め……? ▼伊織(兎角毒苺堂)、くまっこ(象印社)、コドウマサコ(鏡の森)、島田詩子(虚影庵)、藤木一帆(猫文社)、ほた(夢花探)、そして野間みつね(千美生の里)の7人が、一応ファンタジー? という形でリレー。4巡で何とか綺麗に落ちが付きました。▼最初はシームレス掲載で物語自体をお愉しみいただき、後から答え合わせのコメンタリーページを付けるという構成にしています。▼「千美生の里」刊行物としてはレアなB6判。表紙を除く本文の半分以上64ページ分が赤墨2色刷、裏表紙に至るまで某RPGオマージュデザイン、表紙ロゴの触手に箔押し……などなど、装幀もお見逃しなく!

試し読み

 勇気ある者よ 死んでしまうとは情けない
 傷つく者を癒し 死に魅入られた者に救済を与えよう

 これは宣託である
 さあ、再びその身体に神の祝福と加護があらん……

 朗々と響く厳かな「声」は、そこで唐突に途切れた。
「なんだお前か」
「酷い! 最後まで『宣託』くらい言いなさいよ!」
 先程までの厳かな声とはうって変わって、呆れを滲ませた男の声に、甲高い声が猛然と抗議をがなりたてる。
「これが最後まで言ってない、ということが分かるほど『宣託』を聞いてるだろう」
「うぐ!」
 男の声に、思わず呻く声が響くが、もちろん黙っていたのは一瞬である。
「だとしても! 職業放棄せず、最後まで告げるものよ!」
 なおも騒ぐ声に、彼はこめかみに指を当て、ため息をついた。
「毎度のことではあるが、本当にうるさいな。慣れ過ぎだろう」
「な、慣れてるわけじゃないわよ! ただ、ちょーっとだけ、ここに来る回数が多いだけよ!」
「その時点で、すでに『死んで』いる回数が多いわけだが」
「うぐう」
 再び言い負かされた少女がようやく黙ると、男は大きくため息をついた。
「やれやれ、リョウ。職業選択の自由があるとはいえ、いい加減転職を考えたらどうだ。『勇者』なんてやるものじゃないぞ?」
 男の声に、さらに声の主……リョウが呻く。
「いいか、『勇者』といえば、愛と勇気と希望と、オールマイティーな能力と、絶妙な抜け加減が必要な職業だ。お前、『抜け』しかないだろう」
「酷い!?」
 リョウの叫ぶ声に、しかし男はさらに続ける。
「いくら権利とはいえ、外にでては『死んで』しまい、この教会に戻ってきては『死んでしまうとは情けない』という宣託を受けながら『生き返る』とは言ってもだな、こう毎日来られてはたまらないのだが」
「毎日じゃないもん! 昨日は来なかったもん!」
「休みで寝てたからな」
「うぐう」
 再びリョウが呻いて黙る。
「とにかく、ここは『教会』だ。何度でも冒険者を受け入れはするが、俺はそろそろお前の顔は見飽きた」
「見飽きたとか幼馴染に言う言葉か!?」
「幼馴染だからこそ見飽きたあげく、職場でもお前を見るとかどんな罰ゲームだ」
「さらに酷い!?」
 本当に先ほどまで静かに『死んで』いたとはとても思えないほど、リョウは喜怒哀楽に忙しい。
「だったらあんたが付いてきてくれればいいでしょ! この筋肉お化け! なんでその身体で『僧侶』なのよ!」

     ―――作品冒頭から抜粋

大人が全力で挑んだリレー小説バトル

 子どもの頃に、リレー小説を書いたことがありますか? 私は、あります!
 大学ノートに、お友達と、交換日記のように、手書きで。
 いつの間にか、結末のないまま、自然消滅的に消えたリレー小説ノート。内容は覚えていなくて、記憶の中にぼんやりと、楽しかった思い出だけが残るあれは、いったいどこへ行ったのでせうね…?

 この本は、7人のベテラン(?)小説書きたちが、1000字の殴り合いを続けた記録である。
 だいたい1000字ごとにバトンが渡るこのリレー小説は、参加者がそれぞれに思い思いの展開を廻らせて、どんでん返しのオンパレード。
「うわーお、そうきたか!ならばこうだ!」と、筆を鳴らして挑むリレー小説バトルが繰り広げられているけれど、バトンの受け渡しはシームレスな繋がりで綴られているから、「ここから別の人が書いたのね」とは一見分からず、だんだんと物語に惹き込まれていきます。
 そして気付けばきちんと物語が終わっている。怒涛の展開だったけれど、ちゃんと大団円。結構じわりとするストーリー。

 リレー小説って、終われるんだ。

 大人が遊んだ証の、豪華箔押し加工付き製本は、後ろ半分が豪華二色刷りのセルフライナーノーツになっていて、どこが誰の筆か、バトンを渡されたときの気持ちなど赤裸々に語られており、こちらも楽しいです。
 あっ、「豪華」の部分に「無駄に」なんてルビを振らないでくださいね、大人なので。

 リレー小説部分ばかり書いてしまいましたが、物語もたいへんおもしろいです。
 タイトルと表紙から連想される、懐かしきファミコン時代のRPGな世界観が読者を包み込み、バトルあり、謎解き要素あり。そして感動のラストへ。

 大人が全力で遊んだ軌跡を、ぜひご堪能ください。

くまっこ