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あまぶんウェブショップ

販売は2021年7月31日をもって終了しました。
たくさんのご注文をありがとうございました。
  • 幻想小説集 エクピュローシス/太陽の残り滓

    海崎たま
    500円
    純文学
    ★推薦文を読む

  •  炎上する世界の終わりと永遠に彷徨う異教の男。
     未婚で死んだ姉は初めての男に抱かれるように、桃の樹の根元に埋められる。
     花を褥に眠る悪人の見た夢が、舞台の上に終わらない春の幻を見せ、侵略と疫病の恐怖の嵐が吹き荒れる十六世紀ペルーの小さな村では、吸血鬼の影が蠢く??。
     五編の掌・中・短編を編んだ幻想小説集。(文庫判196ページ)

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緻密な文体が織りなす名作

海崎たまといえば、軽妙な語り口で珍妙な日常を綴るエッセイで好評を博している書き手と思われがちであるが、実のところその文体は緻密で堅牢であり、有無を言わさぬ純文学の書き手としても知られている。この点でぼくとキャラがかぶるのでひそかにライバル視しているがそれは今置いておく。なぜ書いた。
本作はその海崎たまにおいても代表作といって差し支えないのではないかという出来の、幻想小説集である。幻想小説というだけあって繊細で緻密な氏の文体が全作に遺憾なく発揮されており、読み応えは抜群。幻想小説好きはもとより、ジャンル横断的要素も多分にありすべての読み手におすすめできる名作といえる。短編小説として極めて優れているものもあれば、中編に近い読み応えのものまで収録されている。各作の概要については、他の方が十分語っておられるのでここでは割愛するが、どれをとっても偏執的ながら堅実な文体が光ることだけは間違いない。
海崎たまの作風を代表する一冊。

ひざのうらはやお

善と悪、生と死。明瞭でありながら混沌としたその境界に立つ

 縦横に思索を広げ、無尽の世界を表現する海崎たまさんの短編集。一言で表現すると、凄いよ。

「エクピュローシス」
 ある者を罵倒したことにより永遠に呪われた「私」。あらゆる凄惨と破壊を視た「私」にもたらされる、再会。永遠の終わりに炎上する世界。

「桃膠」
 亡くなった姉の葬儀。郷里の習俗に抱く微妙な違和感。そしてなにも言わずに逝った姉が秘めてきたもの……

「往く春」
 この作品集のなかではもっとも研ぎ澄まされた作品だと思う。
 歌舞伎役者、舞台のうえで行われる女殺し。殺し合う兄弟。芸に邁進することでしか叶わない「家族」の、凄絶で美しい、永遠と一瞬のなかに留められた「春」の物語……

「墓碑銘」
 何度読んでも1ページ目の「唐揚げの化石」で笑ってしまう……人類とともにあった「トリカラの歴史」。その研究に打ち込む男の生と死。読後、男の姿がありありとまなうらに浮かぶ。笑いながら読みはじめ、いつのまにか(なぜか)真顔になって読み終わる謎の作品。

「太陽の残り滓」
 この作品を、私が編集したアンソロジーに寄稿していただいたのは、私の自慢のひとつです。改稿前と雰囲気が変わっているので両方とも読んでいただきたい。
 南アメリカ、スペイン帝国とインカ帝国、邂逅の悲劇。
 民衆の苦しみのなか、見え隠れする「吸血鬼ピシュタコ」とは?

 善と悪、生と死、それが「ある」というスタンスでありながら、個々の人生のなかでは割り切れないものをそれぞれに抱えている……海崎さんの「在り方」が遠くに透けて見えるような作品集です。

 重ねて言いますが、傑作だと思います。

宮田秩早