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あまぶんウェブショップ

販売は2021年7月31日をもって終了しました。
たくさんのご注文をありがとうございました。
  • アンソロジー女子校

    岸本める、サカトゲヨリオ、大庭あやこ、羆たけし、北中ねむ、日向まみお
    500円
    大衆小説
    ★推薦文を読む

  • 夢と現の交差する、あやしい女子校世界へようこそ!何を隠そう、女子校出身者集団である天狗の会文芸部門分科会。記念すべき十冊目のテーマはずばり「女子校」。卒業してはや幾年、四十路の現在から来し方を顧みつつ、今回もあなたを異世界にいざないます。キャッハウフフしてる作品かと思ったら、なんか思てたんと違う。こわい!続こわいはなしじゃん!「でも通学してる女子高生達は楽しそうだね」「間違いなく楽しそうだね」「キラキラしてるね☆」異世界にいざなっちゃってるしね!勢い抜群、アンソロジー女子校です。

試し読み

 うちのスタッフは優秀だ、と大槻慎吾はいつも思う。
 医療事務担当の二人の仕事は丁寧だし、四人いる看護師もすべて自分が直々に引き抜いてきたやり手である。メンタルクリニックは他の診療科以上にスタッフの優秀さが求められるが、正直、これほど粒ぞろいのメンバーを揃えているクリニックはそうそうあるまい。
 唯一の問題は、開院当初から勤務していたカウンセラーが、先月、出産のために退職してしまったことぐらい。本当は産休・育休を取って戻ってきてもらいたかったが、シングルマザーとして子供を育てる決意をしており、この町を離れて関西に引っ越すと話していた。
「あら、先生。まだ残っていらしたんですか。もう九時近いですよ」
 診察終了後、院長室の掃除にきた事務員の多葉田が、眼鏡の奥の目を丸くした。
「ああ、娘が学校の行事のために、明日まで留守でね。妻は同級生と呑みに出ているし、僕も帰っても独りなんだよ」
「お嬢さんの中学受験が無事に済んだんですもの。そりゃあ奥さまも羽根を伸ばしたいでしょう。それにしても入学からようやく一か月が過ぎたところで泊りがけの行事なんて、さすがは――ですね」
 多葉田が口にしたのは、娘の侑季がこの春に入学した女子校の名前だった。
 幼稚園から大学までを擁するキリスト教系学校法人の女子部。中高一貫教育を売りにしたその女子校は、妻の亜希子の母校でもある。
 地元の中学・高校を経て国立医学部に進んだ慎吾の目からすれば、名門ではあるが突出して偏差値が高いわけでもないその女子校は、金がかかるお嬢様校としか映らなかった。だが亜希子は侑季が生まれた直後から、「この子はあの学校に入れるの」と主張し、この三年ほどは受験準備に奔走していた。念願かなって入学が決まった時の喜びようはすさまじく、当事者の侑季の方がきょとんとしていたほどだ。
「ああ、修養会とか言ったかな。朝から晩まで聖書の勉強をするらしいよ」
 へええ、と感心したような声を漏らす多葉田はきっと、「聖書の勉強とは何だろう」と考えているのだろう。よく分かる。他ならぬ慎吾自身もそう思うからだ。
 ――のカリキュラムは変わっており、毎日の授業の前には必ず礼拝があるし、国語・数学といった一般的な授業と混じって、「聖書」の時間がある。亜希子によれば、文化祭も運動会も必ず礼拝から始まるし、クリスマスシーズンにはひと月も前から讃美歌の特訓時間が設けられるという。
「でも、当たり前よ」
 当たり前。そう、亜希子は自分の母校を評するとき、よくその言葉を口にする。


(作:北中ねむ)

女子校であることで女子の括りから自由になれるのです

たまたま目に入ってどうしても気になり購入。そう私も女子校だったのです。時々えっうちの学校? と錯覚する程完全女子校ワールドでした。羆たけし様の「永遠の女子校」を恍惚として読みました。女子校は永遠なのです。
そして、卒業して放り出されてぶつかる壁〈世間の常識〉を振り翳す人(北中ねむ様「うたごえ」等)にこそ己を省みよと言いたい。正しいのは本当にその常識か。誰が何と言おうと女子校は私が人間らしくいられた場所、絶対手放せない経歴と必死で思って生きてきた独身時代だった。岸本める様「箱庭のおまじない」にあるように、女子校は確かに私を守る場所でもありました。そしてあの自由な空間(日向まおみ様「近所」等)、女も工夫しながら当たり前に力仕事する、高い所の難しい作業もできる、リーダーも当然全員女、女の役割や在り方を強要されず私そのものとして自分が扱われる経験をしたのは私の財産だなあと思います。(サカトゲヨリオ様「碁盤のスキマから」等)
 そう、あとね、パン! (「裏表紙とパンの話」)購買にパン屋さんが来るのは共学もあるのかもしれないけど。女子校って結構厳しい所も多くて、うちの場合は通学途中コンビニに入るのは厳禁だったし、お菓子の気配を嗅ぎつけたシスターがすぐ飛んできて、全員今すぐバスを降りなさい! と発車前のバスから降ろされ一人一人詰問、飴一個でそこまで厳しく叱責されてたんで、許可されたあのパンが(おやつでなく食事扱い・いつ食べろとは言われていない)育ち盛りの私には大事なエネルギー源でした。だから今でもパンが好きです。
サカトゲヨリオ様の表紙が凄い素敵。理想と戦いと夢と力が有った、楽しかった、そして悩み苦しんだ、この本は女子校そのものです。

緩洲えむ