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あまぶんウェブショップ

販売は2021年7月31日をもって終了しました。
たくさんのご注文をありがとうございました。
  • 焔より出ずる氷雪の刻

    小束 弓月
    600円
    大衆小説

  • 槍の鞘シリーズ第二部となります。
    単体でもお楽しみ頂けます。

    約1500年前、倭国の頃の日本で春見の血統「珠洲」は大王家を補佐し、下賜された霊鏡「八葉鏡」と春見家重代の槍「霧叢」を御神体として御坂神社を創建した。

    令和の世、末裔の双子姉妹「三上佐枝子・泉水」は、西から現れた「菊池」という男の策略にはめられ、一族に裏切られて神社を焼かれ「八葉鏡」を奪われる。そして妹の泉水は瀕死となる。

    姉の佐枝子は西に向かい菊池と対峙するが、力及ばない。彼女が最期を悟ったその瞬間、謎の女性が現れ彼女に助力する。

    双子は生きて再び笑顔を取り戻す事が出来るのだろうか?

試し読み

透き通った鳥のささやきが爽やかに響き渡る晴れた朝、神社の和室の中で娘は目を覚ました。そして布団を畳み、ハンガーに掛けられた真新しい制服のブレザーとスカートに着替えると、襖を開け眩しい日光を浴びた。
「桜は五分咲きくらいかな。もうすぐ満開になってお花見、か。三月も今日で最後。私はここを離れるのね」
横では娘よりやや年下の巫女服の少女が座っていた。巫女は娘に一礼すると、ゆっくりと言葉を噛みしめるように言う。
「はい。佐枝子様は明日から普通の女子高生としての暮らしが始まります」
「名字も変わるのね。あなたと同じ「立崎」に」
「はい。祖母が佐枝子様のご成人の時まで後見を務めさせて頂きます」
佐枝子と呼ばれた娘は、その言葉に答える事無く左肩にリュックを背負うと部屋を出た。巫女は遠ざかる佐枝子の背に向かいずっと頭を下げていた。佐枝子は縁側の角を曲がる前に、振り向かずに巫女に言った。
「涼子。妹を、泉水をお願いね」
佐枝子は言い残すとそのまま去った。その姿が見えなくなっても、涼子と呼ばれた巫女は頭を下げ続けていた。