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あまぶんウェブショップ

販売は2021年7月31日をもって終了しました。
たくさんのご注文をありがとうございました。
  • 嫌犬

    藤和
    500円
    エンタメ

  • 2006年の東京のような所を舞台に、高等遊民の青年と、ちょっと嫌な感じの喋る犬が織り成すハートフルストーリー。
    色々な人に振り回されつつ、迎える結末とは。

試し読み

 西暦二〇〇六年地球。
 地球と言っても『ちきゅう』と読んではいけない。地球は『ちたま』と呼ばれる星で、 地球が浮いている銀河系の双子銀河にある双子星である。

 大日本帝國の首都、東京で一人暮らしをしている青年新橋悠希は、最近増えつつあり、 社会問題にもなっているニートの一人。

 そんな悠希と共に生活をしている者が居た。
「おい悠希、ネットばっかやってねぇで飯くれよ。」
二足歩行で歩き、人間語をペラペラ喋る犬が、だるそうに煙草の煙を口から吐き出しながら言う。
「かっ…鎌谷くん!
ウチの中で歩き煙草するのやめてよ!」
 自分の何分の一位しかない犬、鎌谷に、悠希は怯えながら注意を促す。
 それが聞こえているのか、鎌谷はこたつに入り、煙草の灰を灰皿に落とした。
「心配すんなって。
俺が火ぃ落として小火でも起こすとでも思ってんのか?」
「だって、だって、鎌谷くんの歩き煙草で、僕の服が何着も焦げちゃったじゃん!
お祖父ちゃんが着なくなった着物くれたから何とかなってるけど…」
「細かい事気にすんなよ。何とかなってんなら良いじゃねーか。
で、飯は?早くしろよ。」
  鎌谷に急かされ犬缶を開けている悠希の服装は、 彼が言った様に着物に袴と言った古風な出で立ち。
 クリーム色の壁紙が貼られ、パソコンラックが置かれている部屋と合わせると、 何ともちぐはぐな感じがする。
 皿に盛りつけた犬缶をこたつの上に置き、悠希は冷蔵庫の中から取り出した缶ジュースを振って、 口を付ける。
 その様子を見た鎌谷が、鼻に皺を寄せ、明らかに嫌そうな顔をして悠希に言った。
「いつも思うんだけどよ、良くそんなモン飲めるな。
うぇっ。臭いだけで吐き気するわ俺。」
「料理したり買い物したりするより楽だし。
それにもう慣れたよ。」
 悠希が飲んでいるのは乳脂肪分を主成分とした栄養剤だ。
 鎌谷曰く、人知を超えた味。
 初めの内は悠希も飲んだ後、すぐに口をすすいでいたが、今ではもう慣れた物。
 一気に飲み干して段ボール箱の中に収めた。