西暦二〇〇六年地球。
地球と言っても『ちきゅう』と読んではいけない。地球は『ちたま』と呼ばれる星で、 地球が浮いている銀河系の双子銀河にある双子星である。
大日本帝國の首都、東京で一人暮らしをしている青年新橋悠希は、最近増えつつあり、 社会問題にもなっているニートの一人。
そんな悠希と共に生活をしている者が居た。
「おい悠希、ネットばっかやってねぇで飯くれよ。」
二足歩行で歩き、人間語をペラペラ喋る犬が、だるそうに煙草の煙を口から吐き出しながら言う。
「かっ…鎌谷くん!
ウチの中で歩き煙草するのやめてよ!」
自分の何分の一位しかない犬、鎌谷に、悠希は怯えながら注意を促す。
それが聞こえているのか、鎌谷はこたつに入り、煙草の灰を灰皿に落とした。
「心配すんなって。
俺が火ぃ落として小火でも起こすとでも思ってんのか?」
「だって、だって、鎌谷くんの歩き煙草で、僕の服が何着も焦げちゃったじゃん!
お祖父ちゃんが着なくなった着物くれたから何とかなってるけど…」
「細かい事気にすんなよ。何とかなってんなら良いじゃねーか。
で、飯は?早くしろよ。」
鎌谷に急かされ犬缶を開けている悠希の服装は、 彼が言った様に着物に袴と言った古風な出で立ち。
クリーム色の壁紙が貼られ、パソコンラックが置かれている部屋と合わせると、 何ともちぐはぐな感じがする。
皿に盛りつけた犬缶をこたつの上に置き、悠希は冷蔵庫の中から取り出した缶ジュースを振って、 口を付ける。
その様子を見た鎌谷が、鼻に皺を寄せ、明らかに嫌そうな顔をして悠希に言った。
「いつも思うんだけどよ、良くそんなモン飲めるな。
うぇっ。臭いだけで吐き気するわ俺。」
「料理したり買い物したりするより楽だし。
それにもう慣れたよ。」
悠希が飲んでいるのは乳脂肪分を主成分とした栄養剤だ。
鎌谷曰く、人知を超えた味。
初めの内は悠希も飲んだ後、すぐに口をすすいでいたが、今ではもう慣れた物。
一気に飲み干して段ボール箱の中に収めた。