芙蓉にとって、お葬式は、こわい。
こわいとは云っても、参列したことはない。お経を上げたあと、花と一緒に火葬して燃え残った骨を拾うのだと、その程度の知識しかない。それでもこわい。
(……亡くなったから、焼かれたんだわ……)
考えは真夏の影のように反転する。
(……焼かれたんだわ、亡くなったから……。焼かれるんだわ、亡くなったら。焼かれたから、亡くなったんだわ。焼かれたから、亡くなるんだわ……亡くなるんだわ……いなくなるんだわ……)
焼いてしまったら。
炎が燃えたら。
焼かれてしまったら、亡くなってしまう。死んでしまう。
怯んでいた芙蓉はふと思い出した。
「……氷!」
今日買ってきた氷だけじゃあ足りない。もっと買いにゆこう。冷やさなきゃ。冷やさなきゃ。すぐに光があたためてしまうわ。冷やさないと、早く。