細胞が個々のペースで崩壊してゆく。ねえ、楽しいはなしをしよう。もうすぐ壊れてしまうから。
四方が白い壁だ。天井と壁の境目がよく判らない。私は球形のなかにいるのかも知れない。
唇は動かし続けるがそれよりはキータッチの方が思考のスピードに少しは追いつくのだがしかし、もどかしい。もどかしいのはスペースキーを押す空白、を感じ取ってしまった瞬間、から、ミスタイプをして、削除作業をやむなくされる時間。まるで時差の如く不便だ。
あたまが重い。石のように重い。私は呟く、重い。
──頭蓋の中身がルビィなのかも知れない。赤黒く輝くルビィの小粒に化学変化を起こしているのなら、このあたまの重さにも納得出来るしを叩き割れば宝石箱ひっくり返したその衝撃みたいに脳漿飛び散るよ、一面にルビィ。ねえ、紅色をしたあの粒だったらいいねえ。
誰かの戯れ言を挟んで栞とする。
傍らのボトルの水をひとくち。溢れ出る脳内麻薬。息苦しいけれど必死で呼吸をして、そのあいまに踊る指先キータッチ。
あたまを揺らすとぐちゃぐちゃと音がする。右脳も左脳も脳幹も脳漿も混ざり合って中央路線だけを真っ直ぐに真っ正直に真っ向に伸ばし右往左往する思考の果てにあったのは、至高のエクスタシィに似た言葉との交感でした。ああ、もう、息が出来ない。