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あまぶんウェブショップ

販売は2021年7月31日をもって終了しました。
たくさんのご注文をありがとうございました。
  • soyogui, その関連

    泉由良
    500円
    ほか

  • 2011年に書かれた掌編を中心に編まれた、詩と短篇の小説集

    あの節電が喧伝された夏、色鉛筆研究家の恋人、
    落下する自転車を幻視する美大生、街角の蒐集家

    人と人のすれ違うほんの一瞬に感電のように走った仄白い光
    淡く儚いのに何処か怖い せかいは怖い

    「そよぎ」
    「くらげ骨なし」
    「鉢と温室」

    『適温適度の遊書部2011』
      「なんて可愛らしいのでしょう」
      「素敵な詩人さん」
      「カラフルネイム」
      「コンパスでダーツを」
      「一枚だけ下さい」

    「そよがず」

    about solar
      「空について」
      「何処までも世界」

    秋の音符
      「ミッシェル」
      「カセットテープ」
      「あきうた」
      「ひととせ廻り」
      「夜明け」

    「ルルカのの点描画」

試し読み

 ねえ、ニイチ。元気ですか?
 ちょっと、なんか、逢いたいなあ。

 警察のひとがちょっとだけあなたのことを探しているみたいだけれど、きっと捕まったり怖いことになったりはしないだろうなと思います。司法解剖のひとたちは実際のところ死因はよく分からなかったみたい。ニイチ葬儀に来なくて良かった。ああいうの、嫌いでしょ。あたしも嫌い。まあ、お葬式のときにはあたしはそこには居なかったわけだけれどね。ニイチが居たら、やだったと思う。なんかお葬式ってさ、生きているひとの為のことだよね。

  *

 ねえ、ニイチ。
 愛してるっていう言葉を、あたし勿論ちゃんと知っていたけれどでもやっぱり知らなくって、だからいっぺんもあなたに云いませんでした。すごいすごい好きだったけれど、愛しているとは云わなかった。愛について本当にはちゃんと分からなかったし、そういうのもあるから、だから云うの、怖かった。
 でももしかしたら、ニイチがあたしにしてくれたことってさ、全部、ああいうことは愛情だったのかなあって、今になって思ったりします。
 普通はしないでしょあんなの。あたしのことを特別にしてくれていたんだなあって思うと、それは、愛だったのかも知れないと思います。
 でも、あの、ごめん。
 あたしは今でも「愛している」って云うのは、怖い。死んだって怖いものは治らないらしいですね。馬鹿みたいだよね。分かっているのに。愛されていたんだなあって心から思います。そのことを考えると、涙が出そう。
 でもやっぱり、あたしからは云えなくて、怖くて。

 うん、でもね。
 今でも好きだよ。なのになんでああいう風なのは云えないんだろう。泣きそうだよ。
 もう、なかなか逢えないね。
 でもね、好きです。
 それから、
 ありがとう