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卵一個分の怪異
怖い話だ、と思う。
第一話目の妹の心境の変化、あるいは第二話の祖父が抱いていた闇について、捨象してしまうならば、怪異らしきことは各話、卵1個分しかおきていないのだが。
兄の手前勝手な「愛情」(もちろん兄にとってはそれは嘘偽りない真実であったろう)と言う名の卵の殻、祖父の「過去」を封じ込めた卵の内。
白くまろやかな姿をして、卵のうちに閉ざされた闇は深い。それは、「家」の内に閉ざされた家族の抱える闇のように。
「あるようでない、ないようである」怖さの、産みたての卵の殻のような、仄あたたかい、ざらりとした感触に怯える作品。
宮田秩早