エッセイ集「薄明、ここにいるから Vol.1」 豆塚エリ 300円 エッセイ Tweet 『立っている姿のままで彼は今も死に続けている。私は生き続ける。薄明の空の下、今でもここにいる。』初のエッセイ集。 試し読み 薄明、ここにいるから 作業に没頭して、あるいは妙に目が冴えて眠れないままに、朝方まで起きている日、ふと窓の向こうを仰いだときに、若くして死んだあの人を思い出す。 焼けて灰になって、あの人はもういないんだ、と実感したとき、不思議と、距離が近くなった気がした。 私の中では、彼は死ぬ以前から死んでいて、肉体を失った今も死に続けている、ただそれだけのような気がした。……