写真と詩、散文によって綴られるノスタルジックな日々の回想。
多感な少年期を過ごし、『町』に時にすり減らされながら『町』を、そこに生きる人たちを懸命に愛した少年はどのようにしてパフォーマー・詩人・小説家の『にゃんしー』になったのか。
生き続けること、もっと遠くに届くようにボールを投げられるようになること、大人になること、大切な人と共に生きたいと願うこと。
「強くなる」ことを選び取り、望むままにそれを手に入れたいつかの少年は、いつしか自らが弱さをなくしてしまったことに気づく。
強くなることはかんたんで、弱さをなくさないでいることのほうがずっとむずかしい。
「弱くなくなってしまった」自分はもしかすれば、あの死んだ水晶とおなじになってしまったのだろうか。
それでも、元の自分戻ることはもう出来なくとも、こうして振り返ることなら出来る。
言葉の中になら、あのころの大切なものを閉じ込めておくことが出来る。
いまここで生きること、愛すること、無くしてしまった弱さを、あの町に置き去りにしてしまった愛する人たちのことを忘れずにいること。
思い出はいつもすこしいびつであたたかいのだということが、ここには静かに閉じ込められている。
高梨來