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あまぶんウェブショップ

販売は2021年7月31日をもって終了しました。
たくさんのご注文をありがとうございました。
  • いつかの水晶山

    にゃんしー
    600円
    エッセイ
    ★推薦文を読む

  • 山口県防府市で過ごした子ども時代、京都市の大学に進学し、就職して尼崎に引っ越したあと「うたって、おどって、へんなかお」なパフォーマンスをしてきた。

    むらたくんのこと、なかむらくんのこと、きのしたくんのこと、しまくんのこと、かとうくんのこと。

    「空は青くなかった」あの町のこと。

    『キャンディと王様』以来、白昼社×にゃんしーが実現したのは、
    ノスタルジスタ溢れるエッセイ集。写真も多く収録。お楽しみください。

試し読み

「ダメじゃ。死んじょる」 K君がそういう。水晶は本来、透明なものだけれど、この山で見つかる水晶は大抵、白い繊維のようなものが中に走っていてあまり綺麗ではない。そういった水晶のことを、K君は「死んでる」と表現した。

弱さをなくさないでいることはどれだけ困難なことだろうか

写真と詩、散文によって綴られるノスタルジックな日々の回想。
多感な少年期を過ごし、『町』に時にすり減らされながら『町』を、そこに生きる人たちを懸命に愛した少年はどのようにしてパフォーマー・詩人・小説家の『にゃんしー』になったのか。

生き続けること、もっと遠くに届くようにボールを投げられるようになること、大人になること、大切な人と共に生きたいと願うこと。
「強くなる」ことを選び取り、望むままにそれを手に入れたいつかの少年は、いつしか自らが弱さをなくしてしまったことに気づく。
強くなることはかんたんで、弱さをなくさないでいることのほうがずっとむずかしい。
「弱くなくなってしまった」自分はもしかすれば、あの死んだ水晶とおなじになってしまったのだろうか。
それでも、元の自分戻ることはもう出来なくとも、こうして振り返ることなら出来る。
言葉の中になら、あのころの大切なものを閉じ込めておくことが出来る。

いまここで生きること、愛すること、無くしてしまった弱さを、あの町に置き去りにしてしまった愛する人たちのことを忘れずにいること。
思い出はいつもすこしいびつであたたかいのだということが、ここには静かに閉じ込められている。

高梨來