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    空想のまちアンソロジー「ぼくたちのみたそらは きっとつながっている」

    まりも/青波零也/南野風文太/マンノン/なな/巫夏希/世津路章/久地加夜子/青山凪紗/猫春/わたりさえこ/日野裕太郎/宇佐卯楽々/くまっこ
    1000円
    エンタメ

  • 世界は幾つもの《まち》でできている。

    住人は町に守られながら、生涯を生まれた町で過ごす。
    《まち》はどこも閉鎖的で、町外を巡るバスに乗るには、高額のチケットが必要で、町を出るのはひとにぎりの限られた人だけ。

    ──それでも、細々と町は交流している。
    町と町との物流を可能にしている、《どこか》から雇われた運び人。
    町の外に何かを見いだして、町間移動の資格を取る住人。

    ──それでも、生まれた町は特別で。
    様々な思いを胸に、他愛のない日々・特別な日々は過ぎてゆく。

    そんな一つの世界で綴られる、色とりどりの「空想のまち」の物語。
    あなたもひととき、思いを馳せてみませんか。

    一つの世界観を共有したシェアワールドで、作家がそれぞれに思い描く「空想のまち」を物語にした小説アンソロジーです。

試し読み

「雪の壁がね、町を囲んでいるんですよ」
 青年はその光景を思い出しているのか、空を仰いでうっとりと言った。
「雪の壁というと、大きい氷のようなものですか?」
「うーん、少し違いますね……。雪というのは、白いんです。氷を細かく削ると、削った氷は白く見えますよね? ああいう感じです」
 根本的な質問をしてもいいですか、と僕が言うと、青年は「どうぞ」と促す。
「どうして雪は溶けずに町に残るんですか?」
 僕の経験上……というか常識的にも、削った氷はすぐに溶けてしまう。それが、溶けずに道端に蓄積されるという現象が想像できなかった。僕が生まれ育った町には雪が降ったことがないから、雪というものがそもそも分からない。
 それを聞いて青年は、僕の疑問を得心したかのように微笑むと「溶けない気温なんです」と言った。
「ああ、なるほど気温ですか。ええと、上空で冷やされて雪が作られても、地上が温かいと到達する間に雨になってしまうんですよね? ということは、雪町は常に雪が溶けないほどの低い気温を保っている町ということか……それは大変だ」
「この町は温かいですから、そう感じるかもしれませんね」
「常に冷蔵室にいるようなものですよね……想像しただけで凍えそうです」
「大丈夫ですよ。寒さに慣れていない訪問者には、生地に綿が埋め込まれた布団のような服が貸し出されますから」
「布団を着て歩く? それは温かそうですが……」
 想像力がとうとう音を上げそうだ、と僕が呟くと青年は、あははと声を立てて笑った。
 僕の暮らすここ地理町は、暖かい気候の町だ。
 これといって目立った特産物はないけれど、町の中心部に地理院という大きな施設がある。地理院の仕事は土地の測量と地図の生成が主だけれど、なかには地理学を応用した気象予知や自然災害を研究する部屋もあり、稀に町外から見学者が来ていた。
 今日の客人も、そのうちの一人だ。
 ひとしきり客人のおもてなしと朝食の支度を終えた僕は、そのままキッチンの床下収納庫を開いた。収納庫はキッチンの三分の一程度の広さで、一週間分の食料を収納していても、さらに大人二人は悠々と入れる作りだった。
 キッチンから梯子階段を伝って収納庫に降りた僕は、その奥にある地下通路に繋がる扉を引き上げた。
 カンテラを手にして収納庫のさらに地下へ潜る。
 その先、重い扉を押して開けた部屋は、僕の秘密の研究室だった。

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