■ 牟礼鯨
グラノーラにヨーグルトがけ夜業終ふ
あたらしいベッド並ぶる早稲田かな
月光や川の向かふに鉄工所
わらび餅売る歌焼肉屋の裏に
眠すぎて二百十日を過ぎにけり
寿司屋もうやめたのかしら秋の雲
秋夕焼や話は醤油麹から
木の実落つ美術館から抜けられず
荻の近親へ萩の遠戚へ粉糠雨
ウェディングドレスを載せて颱風へ
吊花の実や建築家亡き宅に
乳酸菌飲料売りに竜田姫
からあげのはみ出してゐる爽やかさ
旧姓と靴を捨てます秋の空
月の香は濃し彼岸花白ければ
神鈴は秋声となり事任
白い花が好きな人ゐた金木犀
川蟹を茹でる時間は虫の声
秋晴へ諸手をあぐる衆議院
水澄みて星野みなみの言ふとほり