自由詠

わたし以外部屋誰もいないのに灯を消さず布で覆う眼

飼い鳥の長い風を切る羽を逃げないようにと切る毒親

管理下に置いて日の目にもあてずかくした吾子の牙に砕けろ

贈り物はインク染みの中にはないみたいで聴診器の底

こっち見ろという無言の視線 ママだってまだ愛が欲しくて

行きたいのならばクラブへ行くのね一人の部屋よりあまい孤独

かぐわしい花の匂いも、好きが消えたらむせ返るほどにきつい

漫然と動く自動機械のように過ごしててもバレないよね

コクトオ三島安岡堀辰雄万年床服薬カレンダー

梟の城で初めて目を見て話してくれたひと月かけて

      ■ ひのはらみめい

「燃えてしまう」


「燃えてしまう」(題詠「灯」)

 いぢわるが誰にも打つからないやうに胸に灯台を建てておく

 明るみに出すこと痛め付けること 怖い、夜の海を湛へる

 燃えて痩せて周りを照らし終へて死ぬわたし蝋燭に生まれたかつた

 ほらね笑つてみせてよルルカきみの家も灯りが点いたよクリスマスだよ

         ■ 泉由良

「幸運シロップ漬け」


「幸運シロップ漬け」

 甘いのはいやですピンと跳ね飛ばす角砂糖それくらいのわがまま

 悪魔だとわかってしまったいとしさの幸運をすべて紅茶にとかす

 せっかくの機会ですからしあわせを余分に払って犬にもあげる

 意思の固さくらいのパンだあなたとは別の形で出会いたかった

 どこにでも売ってるものを買いに行く雨の日に古い長靴はいて

 理想的な耳の少年 生き方が君に似てるとおもってしまう

 偽物の夜明けに気づいて引き返し必殺技を何度か使う

        ■ 壬生キヨム

「ヴェクサシオン」

「ヴェクサシオン」(題詠「灯」)

 初飛行に向かう飛行士ののちに友人となる癪持ち点灯夫

 飛ぶことをまるであなたが考えたように観察されてる夕もや

 帰るたび気持ちの離れてしまうこと夕暮れ何もかもよき友人

 逃げられない場所を選んだ責任の目印にしてはいけない「自然NATURE

 安全な場所にいますか大声であなたを表す記号をさけぶ

 いくらでも遠くへ行ける渡り鳥 きみの灯りの元に帰るよ

        ■ 壬生キヨム

十二月題詠「灯」

文庫本開き辿ればそこにある我には見えぬ青い幻燈

進むたび先にともさる電灯はあたたかいとも、冷たいとも

カンテラの灯りは想像の中だけでずっとずうっと燃えております

glow of happiness 心の灯火はほんの少しの風で消えるの

       ■ 朝凪空也

十二月雑詠

 眉太き巫女と三嶋の小春日と

 パイプ椅子を引きずり極月の路傍

 北風をはみ出してゐる教習車

 隙間風や検査キットの線赤し

 人参は未明に届く洗衣院

 風花は巻き戻さるるビデオかな

 怒ることほとんどなくて餅を搗く

  ■ 牟礼鯨

十二月都々逸「灯」

 You are a girl, I am a boy, Let us fire, 息絶える

 灯台に住むきれいな男の裸を見れば海を知る

 灯りをつけてよ恥ずかしいからどうせこの世は終わってる

 灯という字を2つに分けてあなたとわたし抱き合った

 神様なんていないのだから心臓の灯が燃えている

       ■ にゃんしー

「あかるく」


葉ようとやつてきたね脈みゃくと生きてきたんだねと抱いてやる

黄金の銀杏並木はその侭に黄金の路となる農学部

赤い葉もあをい葉も冬が撫で去りて落ちてゆきたり何故あかるくなる

落葉のあとで枝枝見えしとき刺し違へてゐて胸も尖ぬ

葉を踏みて「かしゃり」が次の「かしゃり」までダンスのやうに歩く御所にて

落ちた葉は崩れをり続き何処までも落ち地の底で沈黙の侭

無口だね京大近くのカフェーにて季節柄の寂しいのだと決める

カフェラテの泡が消えたらさやうなら押し葉の栞で綴ぢたら終り

園庭の落ち葉拾ひてたんたんと絵具叩いて紙にしなせる

平たき眼をして一枚ひらう葉の葉脈これが樹の血脈か

         ■ 泉由良