夢想の法則
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ラボラトリはペールブルーの光が点っている。
きみはスケルトン、これはスケルトン、NONOいつも凡ては見えてることさスケルトン、 ヘッドフォンで流しているラップに合わせて、胡桃は精神的に微振動していた。かなり以前にサーバにアップロードされたものを拾ってきたのだが、BPMを他のラッパーの二倍に設定するこの歌手たちが好みだった。本当は音楽なら内耳に入れる受信機で聴こえるのだが、ヘッドフォンの方が音質が良いという迷信を好んでみることが多い。 「……不快な経過になりそうだな」 胡桃は呟く。不快というのはつまり、仮定と違う経過を辿っているということだろう。又は胡桃自身が個人的に不愉快になる──しかしそれは生物の感情であって、何にも関与しない。ただ、予感と呼ぶかも知れない類いの怖気があった。 メッセージの通知。31からだ。 『扶桑の動きの軌道を式とグラフにしています。サイクロイドです。添付しますね』 試験体の水中花の中のひとつ、扶桑のみが二次元上でしか動かないことが以前から注視されていた。全ての試験体の動きは記録されているが、三次元の養液槽の中で何故か平面上でしか動かない、しかも意図的にグラフを描いているのは扶桑だけだった。 『サイクロイド。トコロイドとは、アンテクだね』 31に相槌を打つ返信。
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