出店者名 東堂冴
タイトル こぐま座アルファ星
著者 東堂冴
価格 1000円
ジャンル 純文学
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紹介文
カバー付き文庫版/278頁

同タイトルでWeb公開している長編小説の同人誌版です。
https://note.mu/todo_sae/n/na9e6d8be5370

■作品内容
"――努力を、不断の努力を積める人間はたしかに宗教だと思う。それと同時に、他人を偶像と呼ぶことは暴力だ。"(本編より)
中高一貫校の弓道部に所属する潮は、主将である優都のことを盲目的に尊敬していた。優都は持ち前の勤勉さでそれに応え続け実績を重ねていたが、圧倒的な実力を持った選手・拓斗の入部をきっかけに、重圧からひどく調子を崩していってしまう――。 ただ息苦しくて、不器用にもがいてぶつかり合う、溺れるような青春の日々の物語。 たしかにポラリスだった、あのひとのこと。

第13回小説現代長編新人賞1次選考通過作品

「それがあたりまえだったとはいえ、苦しいくらいしてきた努力に見向きもされずに、生まれもったものだけで評価されるのは、辛かっただろうな」
「努力だと、思ったこともなかったんです。たぶん。だけど、どれだけ一生懸命吹いても、俺の音に価値がないのは変わらないんだって気付いたら、どうしようもなくなっちゃって。――本気になるだけじゃ、どうしようもないことあるんだって一度思っちゃったら、もうダメでした」
 優都が噛みしめるように潮にかけた言葉に、声が震えた。ずっと、だれかに認めてほしかったことだった。努力をするのは当然で、そもそも評価されるようなことではなくて、価値を与えられるのはいつだってそのもっとずっと先のことだった。だというのに、最初からその世界で生きていくことは許されていなかった。それでも音楽を手放して生きていく方法を知らなかったのだ。それがこの十二年間と半年、潮の内側にあったあらゆるものだった。
「結果を求めなくていいとは言わない。上手くなるための努力はしてほしい。だけど、結果が出ないだとか、それが特別じゃないだとかいう理由で、おまえの努力を見捨てるようなことは絶対にしない」
 きっぱりとそう言い切った優都は、また俯いてしまった後輩の横で、「潮」とその名前を呼ぶ。ゆっくりと顔をあげた潮をまっすぐ見据え、優都はいつもの柔らかな笑みを浮かべて口を開いた。
「おまえの努力は、僕が後悔させない」
 その言葉がすべてだった。ずっと欲しかったけれど声に出して求めることの許されていなかった感情が、そこにはすべて込められていた。耐えることもできずに泣きだした潮が再び落ち着くまで、優都はそれからさきなにも言わずに隣に座っていた。




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