【駆けよ、快晴 より】 日差しが程よく差し込む東南の窓辺。見渡せるのは、白亜で統一された街の壁と屋根、遙か向こうの青は海の色、緩く吹く風は勿論潮風。それから、何と言っても大切な、澄み渡る快晴。絶好の読書日和。 街に来て早々に見つけた宿で、窓際に小さく丸い机と椅子が備え付けられている部屋を借り、早速読みたい本を取り出す。焦げ茶色と赤茶色、いずれも革表紙の、装飾一つとっても美しい、羊皮紙とインクの香りが凝縮されたものだ。 二つあるうちの一つの椅子に腰掛け、ランレイは焦げ茶色の革表紙の本を手に取った。片手で読むにはやや大きなそれには、銀の粒子がぎっしりと詰まった題字と、本を囲うような同色の装飾がなされている。 厚い表紙を開けば、本の香りが広がる。長い銀髪が視界を遮らないよう耳に掛けつつ、ゆっくりと頁を捲る。かさり、とした音がなんとも心地よい。 本当なら飲み物の一つでも用意したいが、万が一零すと取り返しの付かないことになる。何より、同行者のいない静かなうちに読み進めたい。 「ラーンレーイ、頭貸してー」 と思っていた矢先に壊されるのもまた一興、な訳がなかった。
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