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著者紹介の鬼才、尼崎文学だらけに現る――。 と、本気でコピーに書きたかったのだが、諸事情により上記とした。 その独創的な著者紹介については、本書並びに相楽愛花氏の著作をお求めいただいたうえでご覧になっていただければと思う。ぼくがそう紹介する理由がわかるはずだ。 と、御託はさておき、この作品は、「Dear friend of Dxxx」三部作(うち、ひとつはまだ刊行されていない)のひとつで、少し未来の、サイバーパンクをにおわせるような不思議な仄暗さを持つ近畿地方のとある都市を舞台に繰り広げられる少女達の日常と非日常にまつわる話である。 ぼくはこの三部作に初めて出会ったとき、灰色の景色にしんしんと雨が降っているような、静かでじめじめとしていて、埃っぽい空気感がとても特徴的だなと思ったのだが、この作品群に共通するのはもうひとつ、「現実とそうでない空間を境界をあいまいにさせながら滑らかにつなぎ合わせられる」感覚を味わわされることである。 この作品においても、その相楽氏の真骨頂とも呼べる独特の叙述が顔を出す。仄暗い世界に横たわる、淡々とした日常とさらに薄暗い非日常。とても不思議で、幻想的で、それでいてどこかリアルでもあるという不思議な感覚を覚えるのは、まさに文体の妙、小説の妙ともいえる。 現実と非現実の境を行き来させられるようなはらはらさと、灰色にくすんだ湿度の高い近未来世界が好きな方にお勧めしたい一冊。 | ||
推薦者 | ひざのうらはやお |