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木と木が擦れるようなゴリゴリとした重い音が聞こえた。きっと閂でも抜いているのだろう。厳重に閉じ込められていたことを感じ心が弾む。 |
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誰かを「生かす」ことが生きる喜びや動機になりえる、そんな心強さがありました。 食べて、眠る。それだけなのに、生きることは案外難しい。 そんな複雑さを解きほぐして、ごはんとして提供してくれるクモがいとおしく思えます。 物語の中にもついのべのエッセンスがたくさん散りばめられていて、そういった言葉の使い方がより想像を膨らませ、クモの生きざまを彩る仕掛けになっているように思えました。 また、クモは巣を作って待つ者、であると同時に 「苦も」なんじゃないかと感じました。後に続く何かを生み出すという意味で。 たくさんの「生きる」を作ったクモがちっとも変わらず、お説教臭くないのもとても魅力的です。 そして、もしかしてあの方を叱りつけて最果ての小屋を作らせたのはクモのお母さんなんじゃないか、とも思いました。何となく、考え方が似ているような気がして。 おいしいものを食べるとうれしい。 そんな根源的、根本的でささやかな、欲が満たされることの喜びを描く一作。 何度でも読み返したくなる魅力的な作品です。食いしん坊ばんざい! | ||
推薦者 | 凪野基 |