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いつかの遠い未来、かもしれない話。 |
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理想郷を目指してそこに向かおうとする少女と、理想郷から出てきた青年による物語となっている表題作をはじめとして、ふたつの世界と4本の短編によって構成されているシンプルな短編集。 肉の味が最もわかるのは刺身にした時だとよく言われる。この作品もそのような、シンプルな世界とシナリオであるからこそ、著者の個性ともいえる文体が静寂に根を下ろし、短編集全体を貫いていると言えるだろう。 とくに、巻頭に配置されている表題作「永遠まで、あと5秒」は、物語の全容が明かされる後半のカタルシスから終息までの展開がとても静かで、澄み切った真冬の夜空のような清浄感と高純度の幻想(ファンタジー)感が非常に心地のよい読後感をもたらしてくれる。 その他3作品も、ときにきらきらとした輝きをのぞかせながらも、どこか非生物的な澄んだ空気をあたりに張り巡らせているような文体が美しく、ごく少々の切なさが極上の読後感につながっているのだとぼくは思う。 すべてが珠玉の作品集。調和と静寂を求めるあなたに。 | ||
推薦者 | ひざのうらはやお |