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さいごに出てきた末っ子はみにくかった。漆黒というには中途半端に黒い皮膚、不完全な円錐のでこぼこしたからだに、へらのような腕 ――それも指などない! ――足はなく、扇状にひろがった尾まである。 |
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深海と神話、このふたつの間に横たわっているものは多いが、なかでも最大の共通点は、「ひとが主人公たり得ない世界」であるということではないかと思う。そんな非人間的指向を強く持つ本作品は、合同誌であるがゆえの持ち味をふんだんに生かして、それぞれの寄稿者たちが一斉に、ヘビーメタルバンドのようなパワープレイを披露しつつ、互いの良さを消さないまま、合同誌としてのまとまりを築き上げているのだ。 同人誌を真面目に読んで、その感想を真面目に書き続けてもうすぐ100冊を数えるが、この作品以上に洗練され、完成された合同誌はほぼないといっても過言ではないように思える。深海についても神話についても、ぼくのようにまったく何も知らない人間が読んでも、造詣の深いものが読んでも、そしておそらくは「かの住民」が読んだとしても――この作品は面白いものに仕上がっているし、そうするために細かい努力と綿密な調整がなされてきたのだろうと思われる。先ほどのバンドの例になぞらえれば、さしずめ至高のアルバムといったところだろう。 同人誌で、かつ合同誌であることを極めきったひとつの姿がここにある。 七者七様の群青には、溺れることしかできない。 限りになく黒に近い、どこまでも広がっていく群青を感じたい方にお勧めの一冊。 | ||
推薦者 | ひざのうらはやお |