TEMPLATE - [PROJECT] TEMPLATE - [PROJECT]

あまぶんウェブショップ

販売は2021年7月31日をもって終了しました。
たくさんのご注文をありがとうございました。
  • ファラールの舞曲

    藍間真珠
    1000円
    エンタメ
    ★推薦文を読む

  • この中に魔物はいるのか? 幼い少女をめぐる謎と駆け引きの異能力ファンタジー!
    ファミィール家の娘ゼジッテリカは、父親に続き魔物に命を狙われる。叔父テキアは彼女を守るため、大勢の護衛を雇うことを決意した。
    偽りの中放られた少女は、偽りを選び取った存在と出会う。

試し読み

 ゼジッテリカが部屋を出るのは久方ぶりのことだった。しかしそれが父の葬儀のためとなれば、はしゃぐような気持ちにもなれない。
 大切な人形を抱きしめたゼジッテリカは、自身もまるで人形のように、ひたすら屋敷の大広間で立ち尽くしていた。隣に立つ叔父テキアの声も遠い。父の死を悼む者たちの言葉は、なお遠かった。
 葬儀とはいっても、形ばかりのものだ。本来であればファミィール家の威光を示すために各地から人を呼び寄せるところだが、護衛的な観点からそれは取りやめになったという。
 今この屋敷の中にいるのはファミィールの関係者や、屋敷の使用人たちだけだ。天井の高い、厳かな広間が、まるで何かの抜け殻のように思えてくる。
「かわいそうに」
 ふいと、誰かの漏らした言葉がゼジッテリカの鼓膜を叩いた。唇を引き結び、ゼジッテリカは目を伏せる。腕からこぼれ落ちた人形の金の髪が、場違いのように鮮やかに見えた。
 ――父サキロイカを亡くしたかわいそうな娘。没落の一途を辿るだろう家に取り残された哀れな少女。
 大人たちがこのところ何を口にしているのか、ゼジッテリカにはわかっていた。彼らは日々あえて難しい言葉を使って会話していたが、それをこの幼い少女が理解しているとは思ってもいないだろう。
 部屋を出ることをほぼ禁じられていたゼジッテリカは、もっぱら本を慰みとしていた。子ども向けの書物を読み切った彼女は、手当たり次第に大人向けのものまで手を出すようになった。そのうち、自然と周囲の人間が何を話しているのか、把握できるようになった。
「テキア様、あなたはどうか」
 まるで誰かの祈るような声が、すすり泣きに混じって聞こえる。ゼジッテリカは、人形を抱く手に力を込めた。ファミィール家の人間が次々と亡くなったのを、偶然の一言で片付ける大人たちは馬鹿だ。それでゼジッテリカが納得すると思っているのだろうか。
 父が突然倒れたと耳にしたのは、一昨昨日のことだった。実際はもっと前なのだろう。本当に帰らぬ人となったのがいつのことなのかは、ゼジッテリカにはいまだ知らされていない。
「皆様、ありがとうございます」
 忽然と、テキアの声が大きくなった。わずかに顔を上げたゼジッテリカは、横目でそちらをちらとだけ見る。黒い喪服に身を包んだまだ若い叔父は、神妙な顔で人々に向かって口を開いていた。

推薦文を投稿する

お名前
メールアドレス
推しコピー
推薦文(1000字以内)
セキュリティ文字 「あまぶん」と入力してください

入力完了

偽りのなかでも、伝えられた思い

一気に読みました。魔物に狙われる館。護衛として雇われたのは、一癖も二癖もある異能力者達。腹のさぐりあいも、バトルも、非常に面白かったです!
失われた愛と閉塞感、我慢するしかなかったゼジッテリカに、手を差し伸べた一人の女性。はらはらしました。正体はわからない、それでも、伝わる思い、信じられる愛はあるのだと教えてくれました。ゼジッテリカが現実を受けとめていく様が丁寧に描かれていてよかったです。
魔物と対峙できる力を持つ、豪華キャスト達も個性豊かで、彼らの言動から目が離せませんでした。色恋話に頭を抱えるマラーヤ、走り回るギャロッドの気持ちがよくわかります。尖った能力者が多い中、常識をわきまえたこの二人の存在は大きく、ありがたかったです。
後半の答え合わせは、すさまじいです。あの何気ない会話に、まさか。と驚きっぱなしでした。
最後の『守り手たちへの後奏曲』は、涙腺にきました。人の時を思いました。これでよかったのだと思えました。素敵な読み切り長編作品です!

新島みのる

その目で見つめるということ

魔物に狙われた家。まわりに満ちていく見知らぬ護衛たち。
状況が混迷を極めていくなか、すこしずつ、おもてをあげていくゼジッテリカ。
交錯する駆け引き、錯綜する謎。
最後まで目がはなせない物語です。

さきは