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    忘れえぬ生涯

    田畑農耕地
    400円
    エンタメ

  • 粗末なベッドの上で目を覚ました男。自分がいる部屋にも、枕元の椅子に腰掛けた老婆にも見覚えはない。老婆に名前を問われた男は、自分が何も思い出せないということに気付いた――(表題作)。様々な形の出会いを描いたショートショート六編。

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 青年は海辺の街に住んでいた。家からほんの数分歩くだけで、夏は海水浴場として賑わう広大な砂浜に出ることが出来る。会社帰り、少し遠回りをして夕闇迫る浜辺を散歩しながら自宅へと向かうのが、青年のささやかな日課だった。
 その日も、青年はいつも通り、規則正しく波が打ち寄せる砂浜を歩いていた。秋と冬の境目を演出する海風は肌寒く、海辺に人の姿は見られない。波打ち際には海藻の塊や流木の類が漂着し、砂に沈み込んで点々と佇んでいる。潮の香りを胸一杯に吸い込みながら、青年は穏やかな景色をのんびりと眺めていた。
 だが今日に限って、青年は突然足を止めた。薄暗い浜辺に一つだけ、夕陽を反射して鈍い光を放つ物体が落ちているのが見えたのだ。青年は手を伸ばし、何の気なしにその物体を拾い上げた。
 果たしてそれは、手の平に収まるほどの大きさのガラス瓶であった。ゴミかと考えて投げ捨てようとした青年は、しかし、ガラス瓶に固く封がされていることと、瓶の中に折り畳まれた紙片が入っていることに気付いた。もしやこれは、ボトルメールというものなのではないだろうか。青年はボトルメールという言葉こそ知っていたものの、実物を目にしたことなど一度もなかった。ここで拾ったのも何かの縁だ。手紙の内容が気になった青年は、瓶を家へ持ち帰ることにした。
 青年は早足で家路を辿り、着替えもそこそこに瓶をテーブルに置いて眺めた。小さな瓶は汚れで灰色にくすみ、ガラスの表面には細かな傷が無数に見える。改めて観察してみると、どうやらかなり遠い場所から流れてきたもののようだ。一層好奇心を刺激された青年は、はやる気持ちを抑えながら慎重に瓶の栓を抜いた。滑り出た紙片はうっすらと黄色く変色しており、そこには鉛筆か何かで文字が書かれていた。(「拝啓、対岸より」)

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