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あまぶんウェブショップ

販売は2021年7月31日をもって終了しました。
たくさんのご注文をありがとうございました。
  • そして木になる私たち

    小高まあな
    500円
    エンタメ
    ★推薦文を読む

  • 緑が減り食料が不足する現在。 私たちは死んだら木になるように遺伝子を書き換えられている。 美味しい実をつけることが、私たちの死後のステータスだ。

    近未来SFひねくれ短編集





    収録作

    ・死んで、花実を。   友人は死んだら桜になりたいという

    ・優しい止まり木   彼女は病室から出たことが殆どない

    ・お化けの森   お化けの森に恋人を捨てた

    ・生えない木   監察医は死因を特定する

    ・みみりんと一緒に   アイドルが亡くなり、オークションがはじまった

    ・恋人の実   「私が死んだら、私の実を食べてね」

    ・木彫り職人   切られる木を使ってアクセサリーを作る

    ・墓守り   先代が引退する


    文庫/50ページ

試し読み

生えない木

 人が腐るのを見たことがない最近の若者はダメだ。命の大切さをわかっていない。
 それが、うちのボスのご意見だ。自分だって、実践で見たことはない癖に。ボスが監察医になったころには、もう人身樹木法が完全適用されていたのに。
 ばかばかしい。
 私は人が腐るところを見たことはないが、人が人でなくなる瞬間は見たことがある。それは、どんな形であれ、グロテスクで、疎ましくて、神秘的で、もの哀しい。
 我々、監察医の仕事は時間勝負だ。ご遺体が亡くなってから七十二時間後には墓地につれていかなければならない。これでも二十四時間だったころよりはマシになったけど。
 時間がないため、人身樹木法適用前よりは、オートプシー・イメージング、死亡時画像診断の技術が格段に上がっている。CT、MRIで画像データを残しておけば、ご遺体が木になった後でも十分に検証が可能だから、というわけだ。
「一人暮らしのご自宅で亡くなっているのを、大家が発見しました。最後に見回りをしたのは、一昨日だそうです」
 今回運ばれてきたご遺体は、すでに腕の先が枝化していた。
「あんまり時間、ないね」
 ため息混じりにつぶやく。一人暮らしの人間の家は毎日決まった時間に見回ること。それが大家、管理人の義務だが、馬鹿正直に毎日見回る人間はあまりいない。人身樹木法が改正され、時間が長くなってからは、なおのこと。彼らにしてみれば、木になる直前にでも発見でき
て、自分の家さえ壊れなければいいかもしれない。しかし、その分我々の仕事の時間は短くなるのだ。
 人は死後、手足などの末端から木になっていく。それを知っている人間はあまりいないかもしれない。柔らかい人間の肌に、硬い木が生えている。爪の代わりに、枝が。緑の葉っぱが付いた枝が生えている。
 ねぇ、ボス。この姿をグロテスクで、疎ましくて、神秘的で、もの哀しいと呼ばなくて、なんと呼ぶの?
 少しずつ、木の部分が増えて行くご遺体を見ながら思った。
 結局、死因は脳梗塞だった。

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ゆるやかで、優しさがにじむ死と木のお話

死後、樹木になる世界観の短編集です。
樹木になって終わりではなくて、
検死だったり、葬式だったり、限りある墓地でどう管理するのかだったり、
いろんな問題があり得ます。
そういった問題まで丁寧に向き合われているのが特徴です。サスペンスやオカルトの小話もありました。
この本を読み終えて感じたこと。それは、樹木が持つ時間軸と優しさが存分に活かされていた、ということです。
火葬され遺骨になる現実では、たどり着くことさえ難しい境地だと思うのです。ゆるやかで、優しさがにじむ死だったと故人をしのぶことは。けれども、この本の中では、その境地がしっかり描かれていて、読めてよかったです。短く充実した短編集でした。この本の背景がピンク色であるのも納得しました。
時代の変化と共に、展開されていく短編のつながりもぜひ楽しんでください。

新島みのる

残されたものから見える、生き方の話

死んだら樹木になる遺伝子操作を受けた人々の、人生を切り取った近未来短編集です。
木になった人のその周囲の態度から見えるものには、どんな世界になっても変わらない部分があることを知らしめられる気分です。それはよくも、悪くも。
科学が発展しても、常識が変わっても、生きているものの本質というのはそう簡単には変わらないのでしょう。
残すもの、残されるもの、残ってしまうもの。それらが少しずつ積み上がることで、世は流れていくのかもしれません。
きっとこの世界には生きているうちに体の一部が木に変質する病があるのだろうなだとか。他殺か自殺か、はたまた病によるものかわからない死がたくさんあるのだろうなだとか。そんな風に想像したくなりました。

藍間真珠