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あまぶんウェブショップ

販売は2021年7月31日をもって終了しました。
たくさんのご注文をありがとうございました。
  • 奈落の王

    壱岐津 礼
    2000円
    エンタメ
    ★推薦文を読む

  • 抗えない運命と、運命に抗う者の織りなす一編の叙事詩。
    抵抗の痕に血と涙はとめどなく流れ大河と化すだろう。
    呪われた者は遂には深き闇に墜ちるだろう。
    けれども、抵抗は果たして全て虚しかったのだろうか?
    奈落は何も答えない。

試し読み

 王子の不運は大地に愛されなかったことである。或いは愛されすぎた為であった。戦いの場は、何頭も、また何台も通り過ぎる馬と車輪に荒らされていた。深い轍の、より深く刻まれた溝に、シンジェルは運んだ足の踵を捕らわれた。よろめいたシンジェルに、グレンバーンは身体ごとぶつかり押し倒した。馬乗りになり、力の限り殴りつけた。下から突き出された切っ先に、敢えて自らの腕を貫かせてへし折った。
「加護が無かったのは、貴様の方であったな!」勝ち誇りグレンバーンはシンジェルの髪を掴み、何度も、何度も地に打ち付けた。
「何故、最初に喉を狙わなかった?或いは心の臓を!殺しが怖いのか?馬鹿が!だから貴様は腑抜けだというのだ!興奮に任せてグレンバーンは、重ねて拳を振るい、シンジェルを振り回した。眼を開きながら何も見てはいなかった。聞こえてもいなかった。
 ようやく息を切らし、虚脱の時が過ぎたのち、組み敷いた敵手からの抵抗が全く無いことにグレンバーンは気づいた。「シンジェル?」
 返答は無かった。
「どうした、シンジェル?何とか言ってみろ。また生意気な口を利いてみせろ」

ぜひ、手にとって読んでください

定められていたはずの運命に、知らぬうちに抗い生きた王のものがたり
童話や神話のようにオーソドックスでありながら、読んでいる最中にはそれをかんじさせない、読み応えのある長編小説です
ほんとにおすすめします!
読み終えたとき、「奈落の王」というタイトルも、表紙のイラストも、登場人物の名前も、すべてはまるべきところにぴたりとはまっているのだと気づかされます
本来なら王は、自分を生きることができなかったはず。なのになぜ、そうならなかったのか。物語中で語られることのなかった、忌むべき歴史の語り手はだれなのか。ほかの方のご意見を聞いてみたい! 語ってみたい。 わたしにとってそんな小説です

とりこ