やっと、気づいてしまった。どんなに楽しみにして情熱をかけても、大人の都合でいとも簡単に、無かったことにされてしまう。両親だって学校だって、私の都合はお構いなしで、定規を押しつけ、矯正装置をはめこんでくるだけだった。
いや、違う。私の声を聞いてくれる大人も、わずかながらいた。けれど皆、両親の力で遠ざけられてしまったんだ。
しまいに、移動手段も情報も何もかも、取り上げられてしまった。私自身が暗い箱の中に閉じこめられてしまった。
最後まで手元に残ったもの、それは兄が私にくれた物ばかりだった。伝えたいな。ゲームもロボットも、ちょっと改造してみたんだ。そうしたら、面白くなったんだよって。
『こわれた学校ゲーム』で、彼を驚かせてみたいな。
なんで兄に会えないんだろう。
会わせてほしいと頼んでも、ノイズが増えるばかりだった。のけ者にされて、箱に押し戻されて、終わり。
ほら、リビングルームに出ればすぐ、座っている。私と同じくらいの背丈の、女の子のロボットが。超完成都市に引っ越して、兄と入れかわるように家にやって来た。母はそのロボットに、私と同じ名前をつけた。そういうことなのだ。
ああ、兄ちゃんに会いたいな
また一緒にゲームがしたいわ
このまま会えないなんて、嫌だ。絶対に間違っている
世の中、間違いだらけなのは知っている
だからといって、諦めてたまるものか
閉じこめられたまま、おびえ、死を待つくらいなら
すべての可能性をかけて、私は兄へ会いに行く
与えられたこの箱にいるのも、今日が最後になるだろう
ヘッドホンの音量をあげる
ノートパソコンとバッテリー、それに
兄と開発した電動ワープグラスを抱えて
私は私のリアルへ、足を踏み出した
全てを変えるために
もう一度、楽しかったあの頃を取り戻すために
物語が始まる。