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    エアンダルのひめごと

    藍間真珠
    1000円
    エンタメ

  • 故国の滅亡と共に、タガンツールの第三王子に娶られたシフレソア。幸福の娘の一人である彼女には、海の底に沈んだ亡国との繋がりがあるという。しかし彼女には一つ秘密があった。
    両片思い小説の再録集。「密の紡ぎ」「緋蓮」「エアンダルのひめごと」を加筆修正しました。 ハードカバー本です。

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「シフレソア様、本日より初夜の儀に向けての準備に取りかかります」
 様々な騒動にようやく区切りがついて、私も息が吐けるようになったとある日のこと。朝食の後に部屋を訪れた初老の侍女が口にしたのは、そんな一言だった。
 ――初夜。ついにその時が来たのかと、私は固唾を呑む。婚約者から正式に妻という身分となったのだから、いずれそうした話が出てくるのは覚悟していた。それでも面と向かって口にされるのは、やはり違った。
 タガンツールの第三王子の妻。それが今の私の立場だ。もはや哀れなエアンダルの娘ではない。悲しげな顔をしているわけにも、たじろいでいるわけにもいかない。
 とはいえ、この国で、しかも王室に入るという形となる者が、どのような初夜を迎えるのか。そうした知識が、私にはまるでなかった。余計に緊張するのはそのためだろう。
「そうですか」
「そのため、本日よりお食事が変わります。また、身を清めるための儀式も行っていただきます。身につけていただくものは全てディアーイン様が選ばれておりますので、そこはご心配なく」
「わかりました」
「この度はディアーイン様の取り計らいで、お二人での初夜の儀となりましたので。そちらもご心配なく」
 淡々とした口調で真顔のまま、侍女はそう告げた。嫁いでくる者の大半は他国の人間だろうから、その辺りはもう織り込み済みということだろうか。けれども「お二人での」という響きが、私の中で引っ掛かった。それではまるで、二人だけではない初夜の儀があるかのようだ。
「それでは失礼します」
 しかしそんな問いを放つ暇はなかった。音もなく踵を返した侍女の後ろ姿を、私は椅子に腰掛けたまま見送る。用件は本当にそれだけだったのだろう。私は膝の上で握る手に力を込めた。豊かな布の上に、小さな拳が沈み込む。
 ようやくここまで来た。何重にも重ねた嘘を乗り越えて、ようやくここまで。そう思うと、なんとも言えぬ心地がする。
 ここしばらくはディアーインともほとんど言葉を交わさない生活を送ってきた。彼が忙しすぎるのがその原因だけれども、初夜となるとそうはいかない。彼をどこまで謀ればいいのかもわからずに、私はため息を吐いた。
 気が重い。彼が私のことを本当はどう思っているのか。そんなことはどうでもよいと言い聞かせ続けてきたけれど、身体を重ねるのだと考えるとやっぱり気に掛かってしまった。
 彼も偽るのが得意な人間だ。

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