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    蒼衣さんのおいしい魔法菓子

    服部匠
    900円
    エンタメ
    ★推薦文を読む

  • おいしい魔法のスイーツで、貴方の「人生のつまづき」癒します

    中部地方にオープンした『魔法菓子店 ピロート』は、お人好しのパティシエ・蒼衣と、陽気なオーナー・八代の親友コンビが営む小さなお店。
    魔力のある不思議なお菓子『魔法菓子』を売るピロートには、悩みや困りごとといった「人生のつまづき」を抱える客が訪れる。
    星座が現れるチョコレートケーキ、体が宙に浮く雲のシュークリーム……。
    客の心に優しく寄り添う一方で、蒼衣は見ないふりをしていた自身の「つまづき」に向き合うことになる。
    友情・家族・仕事……この「世界」で生きるのが、時々しんどいひとへ届けたい。
    「人生のつまづき」をお菓子で癒す、お仕事小説。

    文庫|316P|イラスト:きむらひろき 様
    ※カクヨム・エブリスタ・小説家になろう・ノベマ!の小説投稿サイトにて第一部として本編全文掲載。完結済み
    ※同人誌版は軽度の修正・書き下ろし掌編あり

試し読み

 魔法菓子――自然に存在する、魔力を持った食材で作られる不思議なお菓子の総称。
 信子の中では、日常的に食べるというよりは、特別なイベント……誕生日や冠婚葬祭などで登場する、高級な食べ物というイメージだ。専門店の魔法菓子は、普通の洋菓子よりも値段の相場が高く、百貨店やホテル、東京や大阪の大都市に店を構えていることが多い。だから、地方都市の住宅街にあるとは思わなかったのだ。
「……」
 信子は財布の中身を思い出し、目の前にずらっと並んだケーキを再度眺める。間違いなく、全部の料金を払うことは難しいだろう。
(どうしよう、普通のお菓子屋さんだと思って、値段見てなかった……)
 瞬く間に血の気が引き、信子の顔が引きつった。
「あっ、大丈夫。うちの値段ね、普通のお菓子と同じくらいなんだ。ホテルとかで出るものよりも『おやつ』って感じに近いし。ねえ鈴木さん、せっかくこうしてうちに来てくれたわけだし、ちょうど紅茶もいい感じだし、よかったらそろそろ食べてみて?」
 引きつる信子を知ってか知らでか、蒼衣はほほ笑みを浮かべながらケーキを勧めてきた。
 話を聞いてくれた手前、勧められたら断ることはできない。それに、蒼衣というひとの笑顔は、不思議とひとを安心させる魅力があった。信子は、おそるおそる一番近くに置いてある皿を手に取った。
 皿の上には、黒くてつやつやとした、ドーム型のチョコレートケーキらしいものが乗っている。フォークで表面に触れると、ドームの上に星座の模様があらわれた。
「わっ!?」
 突然の出来事に、信子は驚いて声を上げる。
「大丈夫だよ。これは『プラネタリウム』っていうチョコレートケーキ。名前のまんまだけど、プラネタリウムを再現したケーキなんだ。本物の星のかけらを使ったグラサージュをかけてあるんだ。魔法菓子は、初めてだったかな?」
 蒼衣の問いに、信子は首を振る。
「いえ、幼稚園のとき、誕生日ケーキを魔法菓子にしてもらったことがあります。でも、それ以来食べることがなかったので、驚いてしまって」
 思い出した記憶は、ちょっと苦いものだった。後から生まれた弟や妹はそんなことをしなかったので、両親が怒るのも仕方ないと思っていた。
「確かあのときも、驚いてぐちゃぐちゃにしちゃって。親にすごく怒られました」
「あははは、確かに驚いちゃうよねぇ」

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甘い時間に背中を押されて。

「蒼衣さんのおいしい魔法菓子」は、愛知県名古屋市の隣、彩遊市に軒を構える、ピロートという一風変わったケーキ屋さんを舞台に、繊細でお人好しなパティシエ蒼衣さんと、そんな蒼衣さんを温かく支える親友の八代さんを中心に紡がれる短編連作。
 日常に溶け込む、ちょっとふしぎで、おいしい魔法菓子が、つまづいたひとたちの日々をつないでゆきます。

 魔法菓子というのは、「自然に存在する、魔力を持った食材で作られる、不思議なお菓子」。
 魔法は、手品みたいにすてきな一瞬をスイーツに添えてくれはしますが、奇跡みたいに華やかに、一瞬で人を救うことはできません。
 だけど、すてきな一瞬に触れて、ほんのり上向いた気分はそのひとの行動を変えるし、そのひとと今向かい合っているひとの気分まで変えることがあります。小さな成功体験は継続の勇気に変わり、やがて周囲との関係性や環境を、つまりは未来を、変えることにつながる……ことがある。

 そういう、優しい、地に足のついた希望が語られてゆきます。
 蒼衣さんは、別の作品で見かけた表現だけど、セメントが乾く前の心を持ち続けているような方だなぁ、と思う。そんな感受性の豊かさがあるからこそ、魔法菓子というものを作ることができる蒼衣さんと、ポジティブエンジン搭載の八代さんの感情の掛け合いが呼吸ぴったりで、まさにナイスパートナー。

 ずっと甘い焼き菓子の香りを鼻先で嗅いでいるような、しあわせな読書でした。

あずみ

少しずつ広がる温もり、美味しくいただきます

魔法と甘いお菓子をセットで味わえる本でした。
お菓子をはさんで展開されるドラマは、どのエピソードも読みごたえがあり、ひと月かけて少しずつ読み進めるのにぴったりでした。素敵な表紙をめくる度に、今回はどんな話かなと楽しみでした!
この本を読みきると、クリスマスひとつ、少し違った視点から考えられるようになるのです。また、地元にある小さなパン屋さんひとつ、愛しいなと思えるようになりました。ちょっとした変化を私にくれたのが、とてもありがたかったです。
舞台は現実に限りなく近くて、辛いこともあるし、つまづきます(誰にでも起こりうることなんですよね)。だから、魔法に惹かれる気持ちに、共感しました。でも、この本のみそは、『プラネタリウムと蒼衣の空』にあるのかなと思います。魔法だけでなくて、自ら動くことが大切、というメッセージを受け取り、深く感動しました。
つい持て余してしまうほどの感受性を、受けとめてくれる器をもった友人がいて、一緒に過ごせるのなら。それで働けるのなら。それくらい幸せなことってないです。今まで辛い苦しい思いをした分、これからはずっと幸せになってほしいし、この町でなら、あのお店なら大丈夫だと思いました。オススメの本です。

新島みのる

あまくてにがい、優しい魔法をあなたに

愛知県彩遊市の住宅街に『魔法菓子店ピロート』がオープンした。店を切り盛りするのは営業マン経験ありの気さくで明るいオーナー・東八代と、彼の同級生である後ろで束ねた長い髪が目印の物腰やわらかなシェフパティシエ、天竺蒼衣のふたりだ。
一見正反対の性格でありながら不思議と馬が合うらしいふたりの営む店には、魔法菓子の不思議な力に引き寄せられるようにして様々な事情を抱えた客が訪れる。
"分かり合いたいのに歩み寄れない"普遍的な悩みを抱えた客の心に寄り添おうとしていく中で、次第に蒼衣は目を逸らし続けていた自身の"人生のつまづき"に向き合っていくことに。

不思議であたたかな小さな店を訪れるお客様とのやり取りを通して次第に明かされていくのは、掴みかけた夢から一度挫折してしまった苦い経験を持つ蒼衣の再出発の物語。
学生時代から生きづらさを抱えていた蒼衣は『ありのままの自分でいられる場所』を与えてくれた親友・八代に"パートナー"という言葉ではおさまりきらない憧憬を抱いているようで――。

『ほしいものは何でも手に入れないと気が済まない』バイタリティあふれる男・八代とお菓子作りのセンスは抜群でもそれ以外はからっきしの繊細で優しく、自身を追いつめてしまうタイプの齢三十歳にしていまだにモラトリアム気味な蒼衣。対照的でありながら足りない部分を補い合えるふたりは傍から見れば理想的なパートナー関係に見えるのですが、学生時代から八代だけが誰よりも特別な心のより所だった蒼衣は、いまだに自身が八代へと寄せる絶対的な信頼と敬愛を友情以上のものではないのかと戸惑っているようす。
お菓子の力と共に人々の人生に寄り添うことは出来ても、自分の"人生"に向き合うことはかくも難しい。甘く苦いスパイスの味を噛みしめながら、蒼衣はいまの自分がほしい答えに手を伸ばす決意をする。
果たして心優しいシェフパティシエが手にする答えは……? 
気になる方は是非、きむらひろき先生による優しく色鮮やかな装画と口絵も魅力な本著でお確かめください。きっとあなたの"人生のつまづき"に寄り添ってくれること間違いなしの一冊です。

高梨來