へにゃらぽっちぽー兄さんは新幹線から降りました。ここはどこですか。
「駅です」
なんですかそれは。
「のりものがやってくるのです」
「べんりです」
駅では新幹線や特急、いろいろな色やかたちの列車に乗ることができます。地下鉄やモノレール、路面電車、バスやタクシーといった方々もいらっしゃいます。たのしいですね。
「ぽっちぽ! へにゃらぽっちぽー!」
駅とはすばらしいものです。おいしい駅弁を食べながら列車を眺めて、へにゃらぽっちぽー兄さんは感激しております。
駅を作りましょう。せっかくなのでみはらしのよいところがいいなあ。
《へにゃらぽっちぽー駅》
看板をたてれば完成です。
へにゃらぽっちぽー駅は山です。森を抜けておおきな岩に登りますと、広々とした空と遠くの街がみえます。斜面を降りると、水がしぶきを上げている渓流があります。吹きぬける風は、からりとしてきもちのよいものです。
このすばらしい駅へ来ていただきましょう。のりもののひとたちを招待しました。
「線路がないといけません」
おことわりの手紙が届いております。
「滝を登っていくのはちょっと……」
船のひとも来れないようです。
「たいらなところに着陸したいです」
飛行機のひともご都合がよろしくありません。
「ちょっといま、でかけているのでむずかしいですね」
ロケットのひとはけっこう遠くにいます。
「駅は動けないのです」
駅さんにも断られてしまいました。
へにゃらぽっちぽー兄さんが招待状を送りつけたひとたちはだれもやってきません。「ぽぽぽ……」と岩に座ってぼんやりしていると、シカのひとやサルのひとが近づいてきます。リスのひともいます。こんにちは。
この方々はのりものでしょうか。とりあえずシカさんにまたがるへにゃらぽっちぽー兄さんです。よっこらせ。りっぱな角ですね。
「にゃぽ……へにゃぽ……」
へにゃぽちゃんがやってきました。
「にゃぽ……にゃぽ……」
山登りは疲れてしまいます。この駅はすこしアクセスが悪いです。
(収録作「へにゃらぽっちぽー駅」より)