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あまぶんウェブショップ

販売は2021年7月31日をもって終了しました。
たくさんのご注文をありがとうございました。
  • イリエの情景〜被災地さんぽめぐり〜3

    今田ずんばあらず
    1500円
    エンタメ

  • 勝手にオススメポイント
    ・第1巻刊行から1年間でシリーズ累計300部頒布突破!
    ・東京の大学に通う女の子2人組が東北を旅する、被災地青春ロードムービー。
    ・筆者(今田ずんばあらず)が実際に訪れて感じたこと、思ったことを参考にして描くフィクション。

試し読み

「どこまで話したっけか。――そうだ、私は悩んでいた。写真を撮る意味についてだ。そんなある日、今年の梅雨前だったと思う。内山さんから被災地の話を聞いたんだ。『あんな場所留まってないで、全員移住しちゃえばいい』ってね。内山さんに対する反論、私自身の気持ち、カメラを持つ理由……あらゆる答えが東北に眠っている気がしたんだ。それ以降の話は高田で話した通りさ。どんどん迷走していった。依利江と一緒に旅をしたいと思ったのはそのときだった。もし私が道に迷ったとしても、行くべき方角を指示してくれると思ったんだ。誰かと一緒になにかをしたいだなんて、生まれて初めてのことだった。これでも大英断だったんだよ」
 彼女は頬を引きつらせていた。旅のおさそいを受けた日、小田急線の新宿行、ごく自然な振る舞いをしてたような気がするけど、内心はどれだけ緊張してたんだろう。緊張する三ツ葉なんて全然想像できない。
「過去語りはこれでおしまいだ。以降はこれからの話になる。依利江のヒントが、私の道標になるんだ。
 東北に来て、たくさん写真を撮ってきた。その一部をSNSに公開してるけど、きっと多くの人は単なる震災の現状を写したものだと思うんだろう。そして私は称賛される。被災地の今だ、って。
 けどそれじゃあダメなんだ。私が求めてるのは称賛に浮かれることじゃない。ヴェネツィアは一千年自然と向き合ってきた。だからヴェネツィアの文化が生まれた。そうだよね?」
 わたしは頷いた。
「なら私は撮り続ける。一千枚一万枚、撮り続けてやる。本当に求めてるのは大切なものを撮ることなんだ。長いこと大切なものが一体なにを示しているのか、わからなかった。中途半端にある知識がフィルターになって、私だけじゃ見えてこなかった。被災地を知ろうと覚悟して勉強して意気込んで、それで旅をしたって、本当に求めるものは手に入らないんだ」
「覚悟……」
「覚悟なんて必要ない。依利江は見たいように見たんでしょ。まちを、被災地を」
「まあ……うん」
「見たいように見て、その場だけの感動で終わらない。依利江のは心から見たんだ。依利江の情景は息づいている。今も、これからも、いつだって思い出せる。だから依利江」
 三ツ葉が手を伸ばす。細くて白い指が、わたしの肩に触れた。

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