TEMPLATE - [PROJECT] TEMPLATE - [PROJECT]

あまぶんウェブショップ

1.チェックボックスで注文する書籍を選択ください
2.上メニューの「購入する」→「カートへ」から購入フォームにお進みください
  • カートに入れる

    イリエの情景〜被災地さんぽめぐり〜1

    今田ずんばあらず
    1000円
    エンタメ
    ★推薦文を読む

  • 勝手にオススメポイント
    ・第1巻刊行から1年間でシリーズ累計350部頒布突破!
    ・東京の大学に通う女の子2人組が東北を旅する、被災地青春ロードムービー。
    ・筆者(今田ずんばあらず)が実際に訪れて感じたこと、思ったことを参考にして描くフィクション。

試し読み

「わたし、ここに来なかったほうがよかったのかもしれない」
「え」
 三ツ葉は意外そうな顔をした。それがショックで、弱音を吐いてしまったことに後悔した。
「わたし、準備不足だった」
 深く考えずに口走ってしまうの、本当にヤダ。でももう引き返せないので、思いの丈を吐くだけ吐いてしまいたかった。
「このまちのことや……石巻のことも、これからのまちのことも、なにも知らない。たくさんの人が犠牲になって、たくさんの人がまだ生活を取り戻せてない。苦しんでる。大勢仮設暮らししてるってことさえ知らなかった。せいぜい百人かなって。覚悟不足だった」
 怖かった。
 瓦礫とか、雑草とか、そういう怖さもあるけど、やっぱり人が怖い。わたしの発言を聞いてどういうふうに思われてるのかわからなくて、怖い。
 ここで自白したかったけど、言えなかった。三ツ葉との関係が壊れてしまいそうな気がして、それがなにより怖い。
「わたし、ここにいちゃ失礼だよ。言うこと言うこと、全部失礼になっちゃう。わたしは三ツ葉みたいに話うまくないし、空気も読めない。無自覚であのおじさんを傷付けまくってたんじゃないかって」
「依利江」
 三ツ葉はわたしの頭をそっと撫でた。
「大丈夫だよ」
 そう言った。
「依利江は大丈夫。あの人も握手してくれたじゃないか。嬉しそうに答えてたの、私覚えてるよ。遊びに来てくれって、そう言ってくれたじゃないか。歓迎してくれたってことだよ」
「でも、わたし、覚悟が……」
「いいんだ、覚悟不足でさ。依利江は依利江の見たいように見ればいいんだよ。覚悟抜きの目で見たっていいし、目を瞑ったって、私は依利江を責めないよ。私がいるんだから。苦しかったら頼っていいんだから」
 やさしい言葉がちくちく痛む。
 大きなタンクローリーが仮設の橋を渡る音が聞こえる。バイクがエンジンを唸らせて坂をぐんぐん上っていく。
「三ツ葉はなんでそんなわたしにやさしくしてくれるの? こんな、なんの取り得のないわたしのこと」
「依利江はさ、ちゃんと、見てくれるから」
「えと、ちゃん……?」
 その声は妙に小さかった。道路の音がうるさかった。大切な部分を聞き逃してしまった気がする。
「依利江は友達だからだよ」
 訂正して返してきた。
 三ツ葉は「ちゃんと」のあと、なんて言ったんだろう。「友達だから」って言葉じゃなかったはずだけど。

推薦文を投稿する

お名前
メールアドレス
推しコピー
推薦文(1000字以内)
アマビブで取り上げてもよい
セキュリティ文字 「あまぶん」と入力してください

入力完了

すくいとった情景、10年後の被災地を思う

想像力を働かせるということ。関心を持つということ。個としてその地を歩き、食事をし、人と話したからこそ、見えてくるもの。
公共の情報から削り落とされてしまったものを、著者はまさしくその手ですくいとったのだと思いました。
東日本大震災から10年経った今、この本がまだ入手できる状態にあって、読めて本当によかったです。
主人公のイリエは、文芸学部創作学科の大学二年生です。言葉が足りないもどかしさ、周りにどう思われるかの不安も抱きつつも、彼女なりに、現実と向き合おうとするさまが真摯でよかったです。そして、彼女なりの言葉で、伝えて下さったのが本当にありがたいと思いました。学校の課題のような、誰かに評価されること、調査を目的としたものではなくて。友達を理解したいというぼんやりとした、自分自身の目的を持ちつつ、被災地をめぐる旅が始まったのが、とても重要なポイントだと思いました。そして最後は、旅の記憶を、数十年後も思い起こせるように、彼女自身も語り始めているところがとてもよかったです。
自分が『知らない』状態にあることを知ることが、何よりの第一歩になると気づきました。
私自身は東北から遠く離れた地に住んでおり、被災地のことを全く知らないのだと改めて気づかされました。何があったのか、長期にわたる苦しみ、悲しみも含めて、耳を傾けることが目にすることができていませんでした。ニュースを見てきたつもりでも、日常までは見えていませんでした。
例えば、防災庁舎の映像は何度も目にしていたはずなのに、その後ろの盛土の存在は全く見えていなかったのです。マイクを向けられた被災者の後ろで、地元の人が会話している内容さえ、聞いたことがなかったのです。
そんな私でも、さらなるステージへこの作品は連れて行ってくれました。『知らない』から『想像する』ステージに連れて行ってくださいました。全く知らない人を、関心を持ちイメージできる状態まで引っぱってくれる物語として、すばらしい機能を発揮してくれる本だと思いました。
主人公のイリエとミツバの設定も面白かったです。性格の違いや、若者ならではの感性、ないものねだりになっている部分もあわせて。
続きも読もうと思います。ありがとうございました。

新島みのる