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あまぶんウェブショップ

販売は2021年7月31日をもって終了しました。
たくさんのご注文をありがとうございました。
  • 海の見える図書室 春、それから。【オーディオドラマ付きしおり】

    今田ずんばあらず
    1500円
    エンタメ

  • 四季めぐるオーディオドラマ、第一弾。

    「先輩と一緒に帰りたい……!」
    高校1年生の春菜コハルが抱くささやかな願いは、果たして叶うのか!?
    湘南・大磯高校を舞台にした青春物語。
    移ろいゆく「春」のそれからを描きます。

    小説『海の見える図書室 春の章』をお読みいただくと一層楽しめます……!
    https://necotoco.com/amabun/21/amabun/bookview.php?bookid=123

試し読み

チアキ:カザミ、落ち着きなさいって。マナツが来るなんて誰も言ってないから。あとその高圧的な態度、前も言ったけど、味方になってくれる人も逃げてくわよ。
カザミ:(軽い咳払い)お気遣い感謝するわ。でも、その指摘に対する答弁こそ、以前伝えたはず。このくらいで怖気づくようでしたら、それまでの人間なのよ。付いてくる人は付いてくる。そう、あなたのようにね。
チアキ:ま、とやかく言わないわ。ただ、この子はカザミが思う以上に面白い子だと思うわよ。
コハル:チアキ先輩……!
カザミ:あら、そのくらい承知しております。見る目はある。
コハル:風宮先輩……!!
カザミ:ただ、少々呑気が過ぎるきらいがあって、なにを言い出すか分からない。いわばタイマー表示のない時限爆弾、癇癪持ちの対人地雷。近づけたくはありません。
コハル:ええぇ……。
チアキ:わかるわ。
コハル:そんな、分かっちゃうんですか?
チアキ:……で、ご飯の誘いだったわよね。
カザミ:ええ。キャラメルヌガーを並べて部室でお待ちしております。
チアキ:それがね、ごめん、今日はもう先客がいて。
カザミ:ええっ、新しいおハーブも入りましたのに。情熱的なハイビスカスティー。残念……。
チアキ:あ〜、明日。明日飲ませてほしいな。カザミの淹れるお茶、おいしいからさ。生チョコ買ってくる。
カザミ:生チョコ! アールグレイ味を所望してもよろしい? あの風味が気に入りまして。
チアキ:アールグレイってハイビスカスに合う?
カザミ:いいのよ。食べたいものを食べて飲みたいものを飲めば、自ずと合うものなの。
コハルN:なんか、いいなって、なった。二人の会話はなんだかすごく自然体で、お互いの距離を知ってる話し方だった。風宮先輩は苦手だ。でも、二人の話を聞いてると、怖いだけが風宮先輩じゃない気がした。風宮先輩のこと、全然知らない。知らなくたっていいのかもしれない。けど、きっと〈知りたい〉って衝動は、ムダにはならないんじゃないかって、思う。
コハル:あの……風宮、先輩……!
カザミ:なに?
コハル:気が向いたらでいいです。もしよかったら今度、先輩のお茶、飲んでみたいです!
カザミ:このわたくしが、あなたにお茶を淹れると?
コハル:えと……あ、じゃあ先輩のお茶はわたしが淹れます!
カザミ:(若干食い気味に)そういう問題じゃありません! ご機嫌取りの媚びへつらい?(冷笑の吐息)そんな提案、してくれないほうがマシ。こっちの心まで貧相になる。
コハル:先輩……わたしの言葉、ご機嫌取りに聞こえますか……?