出店者名 壬生キヨム
タイトル ことわりさん
著者 壬生キヨム
価格 200円
ジャンル 詩歌
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紹介文
☆2017年9月17日(仮)舞台化原案本☆

ボーイズラブ、幻想、中二風味の短歌集です。
2017年9月大阪文学フリマに合わせてこちらを原案とした演劇が上演されます!

短歌劇「『ことわりさん』より」
原案短歌:壬生キヨム
作:雪つららきの

【目次】
ぼくが死ぬとき
殺人幻想
星を殴る
自殺に立ち会う

【自殺に立ち会う】

それ以後を誰も知らない雨音をねぎ姉さんの隣に座る
ではそれについて何とか考えてみましょういらえは返らない
自分のこと嫌いになれる瞬間は昔の笑みを思い出すとき
花束を発注するとき渡す子の頭の良さを伝えてください
使うべきところで使ったハンカチが死ぬべき場所を探す土曜日
大学に魔法使いの孫がいて退学届を受理してもらう
盲目の猫すら気づくことわりを緋山が知らないわけはないけど
作品は作者から独立しており病気のひつじの栞が落ちる
だがいきなり考えを変えて立ち上がる海神に背を向ける決意で
万年後ひとは視力を失って保護するものが繁殖させる


あなたはこのままでいてください
どこかで読んだはずの言葉。
絶対に読んだことのない言葉。
言葉はそのどちらかしかないはずなのに、ここで組みあげられた言葉は、キヨムさんしか書けないもの。

ここには卑しさがない。下手な共感を呼ぼうとしたり、感傷を煽ったりしない。

ご本人はきっと、この先に行きたい。
それはとてもよくわかる。
けれど、その先を示すことができる誰かは、おそらく降臨しない。
キヨムさんが背中に隠した千本の腕がきっと、いつか答えをさぐりあてるのだろう。
推薦者鳴原あきら

結局、ことわりさんって誰なの?(なんて聞くのはナンセンス!)
「ふとそこで思いもよらぬ行動が必要となり、フライドポテト。」

のっけからこれである。ピコピコハンマーで通りすがりざまに叩かれたようなインパクトだ。

短歌や俳句とは作者本人のバックグラウンドを踏まえて私小説的に読み解くものだという一説を耳にしたことがある。
わたし個人はその伝統(?)に関しては「なんだよそれ、本人がそうだって言ってないんなら作者と作品は切り離してくれよ」と断固反対したい。

「作品は作者から独立しており病気のひつじの栞が落ちる」

キヨムさんも作中でそう仰っていることですし。ね?
そこでこの『ことわりさん』である。

【ぼくが死ぬとき】
歳の離れた恋人との無理心中を試みる歌なのだろうか。旧仮名遣いを交えて綴られ、視点を行き来して描かれる関係性に「この人たちは?」と不可思議な心地にさせられる。

【殺人幻想】
キヨムさんの言う「中二病」を歌った短歌とはこのことだろうか。

ああ失敗をしてしてしまつた死出の山 はき慣れた靴でくればよかった

あくまでも「幻想」なのだ。幻想から抜け出せないどこかふがいなさがつきまとうが、それすらも滑稽でチャーミングだ。

【星を殴る】【自殺に立ち会う】
どこかやんちゃな言葉たちが綺羅星のようにこぼれ落ちる。この主人公は男? 女? いや、想像上の少年? 呆気にとられるこちらを後目に、キュートに軽やかに言葉は駆け抜け、走り去っていく。


……さて、この歌を詠んだキヨムさんとはどんな人なのか。「ことわりさん」とは誰なのか。
はっきり言って、読めば読むほどにわからなくなる。いや、わからなくていいのである。何にだってなれる、どこへだって行ける、言葉は想像力を翼に、こんなにも軽やかに跳躍出来る。それが、三十一文字のリズムの持つ魔法なのだ。
短歌はこんなに自由だ。こんなに軽やかだ。こんなに楽しい。短歌の楽しさと可能性に触れられる一冊。

余談ではありますが、筆者であるキヨムさんには以前イベントでお会いしたことがある。Twitterや作品から受けるイメージ通りの、朗らかでかわいらしい方だったということをここに記します。


最後にこの場を借りて私信
キヨムさん、いつになるかわかりませんが、とても楽しい歌がたくさんあったのでそのうち解凍させてください。
推薦者高梨 來

短歌であそぼう。
「ことわりさんが大好きです!」と著者の壬生キヨムさんに告白すると、
「世の中にはもっといい短歌があるので、たくさん触れたほうがいい(・w・」と
キヨムさんはおごそかにお答えくださいました。

短歌とか俳句。
あれからたくさん読んできてはいるけれど、
やっぱり「ことわりさん」が好きですよ、キヨム氏。

この本の中には、歌の数だけともだちがいる。
そんなに厚い本ではないので人数は少ないのだが、
みんないいやつばかり。
ひとかけものか、いきてもいないのか。
彼ら彼女らと遊んでいるような、ふわふわした歌たちが楽しい。

特に朗読するのが楽しいです。
57577で読んでもいいし、デタラメに読んでもいいし、
読み方で色が変わって面白い。

この本は、とてもいいやつ。
かばんの奥にしのばせて、待ち合わせとかちょっと退屈なときに開きたい、
大切なともだち。
推薦者にゃんしー