出店者名 泉由良
タイトル soyogui, その関連
著者 泉由良
価格 500円
ジャンル 純文学
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紹介文
2011年に書かれた掌編を中心に編まれた、詩と短篇の小説集。
あの節電が喧伝された夏、色鉛筆研究家の恋人、
落下する自転車を幻視する美大生、
街角の蒐集家。

人と人のすれ違うほんの一瞬に感電のように走った仄白い光。
淡く儚いのに何処か怖い。せかいが怖い。


「そよぎ」
「くらげ骨なし」
「鉢と温室」

『適温適度の遊書部2011』
  「なんて可愛らしいのでしょう」
  「素敵な詩人さん」
  「カラフルネイム」
  「コンパスでダーツを」
  「一枚だけ下さい」

「そよがず」

about solar
  「空について」
  「何処までも世界」

秋の音符
  「ミッシェル」
  「カセットテープ」
  「あきうた」
  「ひととせ廻り」
  「夜明け」

「ルルカのの点描画」


   

 ソヨギという服を持っていた
 二枚の羽根を自分で縫い付けたそれを着ると
 私は翼のある女の子になった
 漢字にするとそれは戦着……そう、soyogui.




 誘拐犯が、逮捕された。殺人犯の容疑者でもあるらしい。逮捕されたのは、あたしのお兄ちゃんだ。




 今晩は、八十七年前の世界の皆さん。落ち込んだりもしていないけれど、私はそれなりに元気です。夏到来ですが空調はつけておりません。
 今日も今晩は。明日は、お早う。いつか辿り着くだろうおやすみなさい。それではまたね。
 それではまたねを突端に。



 でもね、種子がまた出来るわけ。あさがおも賢いからさ、種子をいっぱい結ぶより、強くて大きなのをひとつ結べば良いんじゃないかと考えたっていうか、つまりその年は黒々と大きな種子がとれました。でもやっぱり多いんだよね。だって、次は三代目の種子だもの。
 でもさ。分け隔て出来ないよ。出来ないとは思わない?
 種がここにあるのに、きみは貧相だから植えずに捨てます、なんて宣告、出来ないでしょう。





 存在するということはなんと不確定で不安定な状態だろう。在るということ。消えないということ。その意味と儚さが季節折々につけ、雨雪となって人間の大地に降り注ぐ。




 あたしは今でも「愛している」って云うのは、怖い。死んだって怖いものは治らないらしいですね。馬鹿みたいだよね。分かっているのに。愛されていたんだなあって心から思います。そのことを考えると、涙が出そう。
 でもやっぱり、あたしからは云えなくて、怖くて。
 うん、でもね。今でも好きだよ。なのになんでああいう風なのは云えないんだろう。泣きそうだよ。
 もう、なかなか逢えないね。
 でもね、好きです。
 それから、ありがとう。