出店者名 弥乙澪
タイトル 文芸バレーボール 上
著者 弥乙澪
価格 1,500
ジャンル 大衆小説
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紹介文
舞台は2100年代、日本。国語力と体力が著しく落ちた子供たちを何とかすべく、ある新球技が提唱された。文学的なワードを連想ゲーム形式で叫びながら、ラリーを繋いで戦う。その球技で全国を目指す高校生たちの物語。

「時間制限は一時間。先に三点取ったほうが勝ちで、いいよなあ」
 相手のキャプテンがフロントセンターに立ち、八重歯を見せて悪人らしい笑みを浮かべた。固く尖った焦げ茶色のスポーツ刈りが様になっていてガタイもいい。広い額が自信を物語っている。左胸には山田ジョンと縦書きの刺繍がある。第一印象、バカそう。
 だが向かいに並ぶのは、第一回全国大会で優勝した万葉高校の選手たちである。入試の偏差値もすこぶる高い、巷では難関の男子校だ。万葉高校の文芸バレーボール部は、もっと大規模なチームのはずだ。こっちを見下しているらしく六人だけを向かわせて来やがった。赤紫と紺の縦ボーダーシャツ、そして黒地に白ラインが入ったズボンという妙な体操服を着こなしている。六人とも縦横共に大きく筋肉質だ。敵のキャプテンが大きく鼻を鳴らした。俺はその山田ジョンとやらを見上げ強気に告げる。練習とはいえ、かなり気合いが入った。
「全国大会と同じルールだな。いいぜ。さっさと来いよ」
 去年、五十校が参加し六回戦まであった全国大会で俺たち新古今高校は三回戦で敗退している。第一期生の先輩二人がその日、無念のまま引退した。その初春から三ヶ月。同じ校区という唯一の共通点を理由に持ち出して、何度も足を運び頼み込んで、今日ようやく、態度は不良みたいなのに全国一位である奇妙な万葉高校と、初試合のアポが取れたのだ。
 我が校の体育館はここ大阪では右に出る校がないほど環境が整っているので、依頼した側だが例外的に来てもらった。それをネタにして数十回も謝らされたが、相手は全国一位だから文句は言えない。敵陣は面倒くさそうに伸びをする。いつも使っている球じゃないと落ち着かねえ、などと言い、やつらは青と黄色の配色をしたボールを持参してきた。俺たち六人の大事な白い排球は、今は体育館の隅で寂しそうに揺れている。
「がははは! てめえらの負けは決まってるのによお、無謀な挑戦を挑んできたよなあ、バッカじゃねえの。なあ、ちっちぇえキャプテンさんよお」
 そう凄んだジョンとやらを目の前から睨みつけ、笑って宣戦布告を返してやる。
「やってみないと、わからねえだろ」
 強気だけが俺の取り柄だ。
 そうだ、背は低いが人並みに筋肉はあって、褐色肌で黒髪なこの俺こそ、国語好きそうな名前してるという理由だけで昨年ここに引きずり込まれた、新古今高校文芸バレーボール部第二期生キャプテン、二年三組の小野マトペである!




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