出店者名 ナナゴウマル
タイトル あなたがずっとすきでした
著者 ナナゴウマル
価格 200円
ジャンル JUNE
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紹介文
短編小説集「あなたがずっとすきでした」 装丁:迫水サコ

1.コミュ障SE×パリピ営業 残業中の気になるあのコに声をかけてみたら意外にスゴいんだ
2.鉄道写真家×鉄ヲタ大学生 ローカル線で憧れのヒトに遭遇できたので全力で誘ってみたよ
3.片恋高校生 なんだかよくわかんないけどあいつ見てるとモヤモヤするんだ

1 そろそろ 入れて イイですか

ちょっとした気まぐれで誘ったと思われたら心外だ。
並んで歩く、少しだけ俺より背が低い華奢な彼のことを、実はずいぶん前から気になっていた。少し俯き加減の後ろ姿、遅い時間になると画面を見ながらガリガリ爪を噛んでいたり、伸びをするときにはいつもアロハの指になっていて。週末の帰り際だけレッドブルを買ってたり、かわいいな、なんて思ってしまうとどうにも目が離せなくて。思わずキスしてしまったけど。

2 ちんちん電車で行きましょう

旧国鉄、昭和50年代に作られたキハ40形は大袈裟な音を立てて線路を進んでいく。端っこが錆びついた四角い樺色の車体は、きっとまわりの深緑の森林と碧い海によく映えるんだろうな。
「すみません」
窓の外を眺める僕に、
「はい?」
カメラを向けた彼が声をかけてきた。
「きみも写真に入れていいですか?」
いいですか、なんて言いながら振り返った瞬間にシャッターは切られていて。
「ありがとう」
その写真は今もリビングに飾られているけど、そのときに「ありがとう」といったあなたの笑顔はあまりに眩しくて、僕はきっと、その瞬間に恋をしたんだと思うよ。

3 なんだか気になる

それは四時間目が体育のあとの昼休みやったりして。オレらは女子の胸の大きさについて喋ったりしとって。
「あーっ、ムラムラするわーっ」
ちゅうと吸い取ったオレンジジュースはもうすっかり空っぽで、ズズズと安っぽい音をだす。
「見た? 森ちゃんのユッサユッサ」
「見た見た。あれでスク水はアカンわー。反則やろ」
なんて、てめえのカノジョでもないのに好き勝手いう。
そしてそんな話には興味がないのか、ヘッドフォンをつけたままハードカバーを読んでるヤツがひとり。