「あなたは私を捜していたの?」 柔らかい布を抱きしめ、梅花はゆっくり頭を傾けた。辿ってきたということは、つまりそういうことなのか。レーナはさらに顔をほころばせ、悠然と頷く。 「そうだよ。オリジナルに会うために。そのためにこの星に来たんだ」 亜空間で見た時と同じ、心底そう思っているとわかる微笑。戸惑った梅花は閉口した。神技隊を襲ってきたと思ったら会いたかったと口にする、レーナの意図がわからない。けれども嘘を吐いているとは感じられなかった。根拠はないが、勘だ。そして今の一言で決定的となったことがある。この星と言うからには、レーナが宇宙から来たのは間違いない。 「ずっとこの時を待っていた。そのために、準備をしてきた。ようやくここまで来た。手遅れにならなくて本当によかったと思っている」 しみじみとしたレーナの口調から、感じるものがあった。梅花は布の端をぎゅっと掴み、つと瞳を細める。この気持ちは何だろう。むずがゆいとも違う、じんわりと染み込んでくる感情がある。 「レーナは……苦労してきたのね」 ぽつりと漏れた言葉は、梅花自身にも意外なものだった。労るつもりなどなかったが、素直な感想がこぼれ落ちた。レーナが一瞬だけ、驚いたように息を止めたのが伝わってくる。いくら雨音が強くともわかる、肌に直接触れるような喫驚の気配だ。 「――そうだな、色々あったな。でもそれも、今こうしてオリジナルの傍にいるためなら、意味があったと思える」 感慨深そうなレーナの言葉に、梅花はどう返答していいのかと困惑した。そうさせるだけの価値が、自分にあるとは思えない。いつもずっと、必要とされてきたのは能力だけだ。しかしレーナがそれを求めているとは思えなかった。レーナの方が遙かに力を持っている。 「オリジナルがいなければ、われは存在しなかった」 「あなたたちは、何者なの?」 思い切って、梅花はそう問いかけた。ずっと胸の中に抱いていた疑問を吐き出した。確かな繋がりがあるというのなら、レーナたちは一体何者なのか。どうして同じ姿をしているのか。だが肝心な質問に対しては、レーナは首を振るだけだ。 「それを説明するには、色々なものが足りないな」 「私の知識がってこと?」 「それもある。単に状況がそこまで進んでいないとも。全て、タイミングというものがある」 もったいぶった話しぶりは、そのタイミングをはかっているのか? 梅花は目を伏せた。
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