「鍋奉行と美少女」黄鱗きいろ 鍋の端から蒸気が小さく噴き出ている。鍋の蓋は閉まりきらず浮いてしまっている。その隙間から見えるのは真っ赤に色づいた蟹の足だ。 「……まだか?」 「まだだ。もうちょっと待ちなさい」
「俯瞰」静八 畠 日本海を正面にした港町には、北風どもが連れて来た大粒の雪が降った。何日も降り続けて厚手の雲が太陽を全く隠すので、当然降る雪は振る儘で溶けず、嵩だけが増してゆくばかりである。
「蟹の魔女」紙箱みど 磯を歩いて十数分。できたら手袋をしていくこと。間違っても肌を出す格好で行かないこと(転んだときに大変なので)。教わったことを忠実に実行しながら、少女は磯を歩いていた。
「ある日のお客様」志鳥ふみか このシーズンになると、当旅館では蟹のコースを頼まれるお客様が増えます。片づけが面倒になるし、あのにおいが苦手だし、何より宴会の席でもひっそりと静まりかえってしまうので、私は個人的に蟹のコースがあまり好きではありません。
「蟹と少女と亡霊と」青波零也 お客様には快適な船旅を約束するのが船長たる私の役目と理解していても、食糧不足は如何ともしがたいものである。時折流れ着く(と認識することにしている)保存食だけでは当然栄養価は偏るもので、
「蟹を食べるに至るまで」神奈崎アスカ 『今日夕飯まだ?』と連絡が来たので『まだー。親もおらん』と返して、待つこと八分。家の呼び鈴が鳴る。 「やっほー今日は蟹やでミカンちゃん」
「殻」蟹糖繭 「蟹の殻って、硬いのね。割ってくれない?」 一昨日まで姉が暮らしていたという、生活感の溢れる小さな部屋には、蟹酢特有の酸味や、蟹特有の瑞々しい香りが溢れていた。
「利己的な玩具」やさぐれ涼 真夜中の海を漂流した少女は、朝日が昇る前に島を発見した。少女には両親も兄弟もなく、天涯孤独の感覚は、五感と同じように、生まれた時から持っている感覚だった。
「日本産美少女によるカニの摂食行動」刈薦真秀 日本列島におけるヒト Homo sapiens sapiens によるカニ(定義は本文参照)の摂食は、三内丸山遺跡の「捨て場」においてカニの殻が見つかっているように、縄文時代にはすでに始まっていた。
「蟹道落」岡崎マサムネ るぅ子は少女である。 そして少女は、蟹が好きだと相場が決まっている。 ましてるぅ子は美少女である。 となれば、蟹を食べることはもはや必然であった。
「蟹 meets 美少女」木村凌和
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