出店者名 みなもとはなえ
タイトル Letter to ME
著者 みなもとはなえ
価格 500円
ジャンル エッセイ
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紹介文
誰かの日記をこっそり読んで、私ではない誰かも、毎日を生きているのを知るのが好きです。
2014年から2015年まで、SNSの「note」で書き溜めたエッセイをまとめました。
なんでもない私のなんでもない日常には、たくさんの感情と憂鬱と美しさであふれていました。

掌編小説3編・描き下ろしエッセイ3編に加え、いくともさんによる解題も収録。

先輩、私のこと嫌いですもんね、と言うと、先輩は、そんなこと言わせてごめんな、ときざなセリフを言う。痩せている後輩に、マッチ棒みたいだねと言うと、お恥ずかしいですと彼女ははにかむ。大して仲良くない同期に赤ん坊が生まれたので、今度職場に来たらぜひ連れてきてね、と言ってみる。嫌いな上司にも気配りを忘れない。好きな先輩にはちょっと冷たくする。苦手なアルバイトさんにも良いお年を、と声をかけると、アルバイトさんも笑顔で来年もよろしくお願いしますと言った。

静かに一年が溶けてゆく。
嘘と本当が優しく配分されていく。静かに、柔く、広がっていく。

先のことはわからない。仕事が大変かもしれない。やりたいことをできているかもしれない。だけど、そういうときに、いつも傍にいるのはやさしい他人たちだ。そしてまごうことなき、自分。
年末はいつもやさしい気持ちになる。見通せないこの先のことも、灰色の冬の中でも、少しほっとする。
これからもよろしく、愛しい他人のみなさん。

(「やさしい他人」より)