出店者名 バイロン本社
タイトル Lacrime rosse 吸血鬼作品集
著者 宮田秩早・アコカズ・羽彩仁海・ミド・七輪・齊藤さや・伊ノ本カズラ
価格 700円
ジャンル ファンタジー
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紹介文
クラシックな吸血鬼譚をテーマにした宮田秩早・アコカズ・羽彩仁海・ミド・七輪・齊藤さや・伊ノ本カズラの7名によるイラスト・小説の作品集

A5/100ページ

「Vampire Halloween」イラスト アコカズ
「1917年の旅人たち」1917年旧暦の2月 ロシアが舞台:宮田 秩早
「夢想」19世紀初頭 ドイツが舞台:七輪
「Noapte, cea?ă, ?i Zmeu」1944年 ルーマニアが舞台:ミド
「エルフォード探偵事務所」18世紀末 イギリスが舞台:齊藤さや
「真祖と銀灰の従者〜念願のもふもふっ!〜」イラスト 羽彩仁海
「1989年のピクニック」1989年8月19日 ハンガリーが舞台:宮田 秩早

「お前……なんなんだ、そいつは、お前の……竜、なのか?」
 俺は迂闊にも声に出してそう言ってしまった。竜は首を俺に向けた。爛々とした赤い目がそこにあった。人間も驚いた様子を見せた。霧の中で顔ははっきりしないが多分若い男だ。彼は俺に向かって何か言ったが、さっぱり理解できなかった。お互い立ち尽くしていると、右の方から、今度はドイツ語が聞こえてきた。姿は見えないが何人もいるようだった。万事休すか……。
「きっとアーネンエルベだ。心配はいらない。決して十字架から手を放さずに横になって、死体のふりをしていて」
 男は俺が英語を喋ったことに気付いたらしく、自らも英語でそう言った。訳がわからなかったが、この男は悪い奴でもなさそうだ。素直に寝転がり、男がアーネンエルベとやらを追い返すのを待った。それにしても、今日は滅茶苦茶なことが次々と起きる。
 やがてドイツ兵は去り、気が付くと竜も消えていた。戻ってきた男は俺に怪我がないか尋ねた。
「あいつらもそうだが、お前も一体何なんだよ」
「それは言えない。あなたは脱走したんだね。ついて来るといい」
 少しは疑うべきだったかもしれないが、この時俺は目の前の男を信じ切っていた。少なくともドイツ軍から助けてくれたのだ。俺が同意して男の後ろを歩き始めたその時、元来た方向から凄まじい悲鳴が聞こえた。直ぐに頭に浮かんだのはエイブだった。助けられるはずもないのだが、俺は咄嗟に走ろうとした。
「戻らないで! ここにいて、あなただけでも生きなければ」
 男は俺の腕を掴んでそう言った。悔しいが、その通りに違いない。戻っても捕まって処刑されるだけだ。俺は言われるがまま男の車に乗り、収容所を後にした。

(「Noapte, cea?ă, ?i Zmeu」より)


新鮮な驚きに満ちた、クラシックな吸血鬼モノ
『Lacrime Rosse』は、『Crimson Regalia』につづく吸血鬼作品集の第二集です。
「吸血鬼モノばかりを集めたら、ネタがかぶっちゃってるんじゃない?」……なんて心配はいりません。
英国の探偵譚、第二次大戦下の戦闘機とドラゴンの物語、そして、吸血鬼オールスター大集合な一作などなど。
すべての作者さんがしっかり自分の文体や画風でもって「吸血鬼」という題材を生かしてらっしゃって、私のように世界史や吸血鬼モノになじみがない人間でも存分に楽しめました。
(もちろん詳しければもっと面白いはず!)
吸血鬼ってこんなに多彩なのですね!
読み応え満点、「クラシック」な吸血鬼モノだけど、新鮮な驚きに満ちていました。
また、それぞれの作品が実在の国と時代を舞台としているので、歴史の影に暗躍する「彼ら」の姿を垣間見られるのがこの作品集の醍醐味だと思います。
もしかしたら、この現代日本にも……? なんて想像してみるのも楽しいですよ。
推薦者泡野瑤子