海に果てがないように
書籍名 はばたく魚と海の果て
作家名 キリチヒロ
購入イベント 文学フリマ東京
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紹介文
「はばたく魚と海の果て」は
「ミニチュアガーデン・イン・ブルー」「夏火」から続く
blue三部作の完結編。
「ミニチュアガーデン・イン・ブルー」が高校1年で、
「夏火」が高校2年で、
今年発刊された「はばたく魚と海の果て」が高校3年。

陸と智尋と椎名という、男子高校生3人の物語。
海沿いにある田舎の町の物語。

ああ、この物語に出会えてよかったな、と。
今年を振り返ったとき、思い出されることとして
そんな感謝がある。
著者のキリチヒロさんは「ひとを殺す小説を書きたい」と
言っていたような気がするけど、これは「ひとを生かす小説」だよ。
この小説に会えたことがよかった、と思う。

主人公・智尋の「恋人」である陸くんが愛しくて愛しくて。
全3作を通じて、彼が成長し、人としての体温を得ていく姿を
追い続けた。
そんなに感情を表さない彼ではあったけど、
陸くんが嬉しいときは嬉しかったし、悲しいときには落ち込んだ。

陸くんのお父さんである明貴さんと、お母さんである早苗。
陸くんの視点を通じて物語の世界に仮住まいを得るとき、
明貴さんと早苗は特別だった。
彼らはいい家族であっただろうか。
分からない、けど、幸せな家族写真が一枚浮かび上がるような
エンディングだった。
血の繋がりは特別で、言い表せないような秘匿性がある。

この物語を振り返ったとき、最後、金色の光に包まれる陸くんを思うとき、
感謝しかなかった。
この物語に会えたことと、この物語を書いてくれたことと、
それから、キリチヒロさんがキリチヒロさんであってくれたこと。


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