「少し、外に出てくれないか」 私が何にはばかる事もなく、優雅に引きこもりライフを送って四年目が過ぎたある日。唐突に父の自室に呼び出されていた。 「今度とある島で忘年・新年パーティが開かれるのだが、私は先約があるので行けないのだ。向こうは代役でもいいから血縁のものを寄越して欲しいと言ってきたのでな」 「血縁って……何ですかそれは。うちの家が顔を出すことに何か意味が?」 「向こうにも色々と事情があるのだろう。というわけで、だ。年末年始とはいえ大晦日と元旦を挟んで五日も孤島に滞在できるような暇人に白羽の矢が立ったというわけだ」 「暇人とは失敬な。日々世界中の情報を集め、株式市場やら為替相場とにらめっこして莫大な富を築き上げている才女になんて言い草ですか」 「そんなもん小遣い稼ぎだろうが。そもそも稼いだ金は全部お前のわけのわからん趣味に消えているだろう」 一応損害込みでも年間で税抜き純利益は四百万を超えているのですが、そんなものは『ウチ』ではささやかなお小遣いに過ぎません。漫画とかアニメ、ゲームで大半が消えるしね。最近は特典目当てで複数買い余裕ですし。 「というわけでその才女様とやらにはしばし仕事をお休みしてもらって、孤島でバカンスを楽しんできてほしいのだが」 「ものは言いようですね」 「で、行くのか、楽しんでくるのか、どっちだ」 「……つまり選択権がないんですね、最初から」 「断るといろいろ面倒なのでな。話しかけてくる相手に愛想笑いだけして後は安物の食事をむさぼってくるだけでいい」 「……さいですか」 まぁ、もともとこの男にはあまり逆らえない。私も稼ぎはあるとはいえ、一応屋敷を間借りし、衣食住はまだ頼る部分が多い身だ。 年末年始の取引再開までは時間はあるし、お金の意味では心配はない。特番編成でアニメもないから、いいっちゃいいんだけれど……。 「年末年始は部屋にこもって懐かしのアニメいっき見しようと思ったのになぁ……」 私の恨み言も父には届かず、そんなこんなで私のネオニートライフは、しばらく中断となることとなった。
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