あじさいの若い花が生き生きしていました。雨が降っているのもあって、水分が細胞壁の内側を隙間なく満たして張り切って、空気を胸一杯に吸って、吐き出す呼気が霧になって目に見えるよう。雨の匂い、雨が洗う空気の匂いが澄んで、澄んで、気持ちいい。 押し固められた土を歩けば、雨を含んでしっとり息をしています。水たまりには細い雨が小さな波紋を作り、砂利に注げば吸い込まれていく。あじさいの丸い花の中の、ひとつひとつの小さな花にも雨粒を見つけてしまう。青々したはっぱにはカタツムリがいる、そんな景色に出会える道のりでした。 きっと、アンダンテだから。 「こんにちは」 カタツムリに話しかけたら、びっくりしたのかニョロリと動いた。はっぱに乗っていた雨の粒がつるりと流れて、下の葉の上でまた雨粒になる。大きく重くなったそれは、葉脈を伝って落ちて、軽くなった葉っぱが上を向くのです。 アンダンテでドルチェ、やわらかい音楽。 フレーズの最後にスタッカート。
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