尼崎文学だらけ
ブース ファンタジー4
WindingWind
タイトル 飛翔の先へ
著者 風城国子智
価格 300円
カテゴリ ファンタジー
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紹介文
西洋中世風ファンタジー「獅子の傍系」第一章。
平凡な自分が騎士として迎えられ、幼馴染みの従妹ライラが女王になっている夢を見たその朝、ルージャが父親と伯父伯母と暮らしていた小さな集落は謎の集団に襲われ、父親達は無残に殺された。父親達の敵を討ち、ライラを守る為に、ルージャは敵と同じ服装をした『新しき国』の見習い騎士となり、副都で新しい生活を始める。そのルージャの前にたびたび現れるのは、夢の中に出てきた、『新しき国』に滅ぼされた『古き国』の騎士団長に見えない騎士団長、ラウド。ラウドや、ルージャを拾ってくれた『新しき国』の騎士団長レイの助けを借りながら、ルージャはライラを守る為に見習い騎士として修行を積み、歴史を学び、人々を脅かす『悪しきモノ』に対峙し、そしてある選択をする。

「ようこそ、我が騎士団へ。我々は、君を歓迎する」
 突然、目の前の人物にそう言われ、ルージャはぽかんと口を開けた。
〈……騎士、団?〉
 ルージャは、人里離れた山の中腹にひっそりと佇む、村と言うには小さ過ぎる場所で育った、ただの少年。この前ようやく十四になったばかりだ。父からは野山で生きる術や弓矢の技を、父の兄である伯父からは剣術を、そして伯母からは読み書きや計算を習ってはいるが、どれもまだ中途半端。日々の暮らしで精一杯の、ちっぽけな存在だ。冬の夜に暖炉の傍で伯母が話してくれる物語に出て来る、弱きを助け悪を倒す強靱な存在である『騎士』から、自分ほど掛け離れた存在はおそらく、無い。なのに、俺が、『騎士』? この人は何を言っているのだろうか。
「……あ、れ?」
 ルージャが戸惑いの表情を浮かべたのに面食らったのか、ルージャの目の前に立つ青年は、肩に掛かる濃い色の髪を左手でぐしゃぐしゃにしながら言った。
「あ、やっぱり、俺、『騎士団長』には見えない、か?」
 そう言われて、改めて目の前の人物をじっと見詰める。ルージャと同じくらいの背丈で、ルージャよりはほんの少しだけ年上に見える、おそらく男性。緋色の上着の上に、鎖帷子の肩と胸部分を板金で補強した黒光りする鎧を身に着け、羽織ったマントを椿を模した銀色の留め金と、狼を象った金色の留め金の二つで留めている。幅広の剣を黒い剣帯で吊り下げてはいるが、小柄でほっそりとした身体つきをしている所為か、武よりも文で王侯に仕えている人であるようにルージャには見えた。顔立ちも、纏っている雰囲気も、中性的で優しげだ。伯母が話してくれる物語に出てくる『騎士』からは、やはり、掛け離れている。こんな人が『騎士団長』になれるのだろうか?
「まあ、よく言われることだから」